さぁ、ついにこの日が来ました。
環島の最難関と言われる峠越えです。
台湾の中央部は南北に山脈が走っているので、
西側から東側へ抜けていくためには
山を越える必要があります。
この日の目的地は台湾東部の台東。
さぁ無事に峠を越えられるのでしょうか。
峠の情報
毎度お馴染み台湾観光局の「環島」資料 では、
このルートの最高地点は海抜460mとのこと。
この最高地点には壽卡(寿峠)鐵馬驛站という
サイクルステーションがあります。
まずはここに辿り着くのが目標です。
BikeRollで調べてみると、
スタートから40km弱で海抜460m地点に到達。
そのあとの10kmで一気に下ります。
序盤にピークがあって、
そのあとは平坦な道が続くから
最初の50kmだけ頑張ればイケるかも。
ちょっと待てよ。
環島3日目の目的地だった日月潭、
そこの標高は確か、、820m。
…ん?今回は460mですか?
楽 勝 じ ゃ ね ?
慢心は良くないですが、
気持ちはだいぶ楽になりました。
強者は日月潭を経験するべし。
(でもおすすめはしません)
雨が水を差す
日月潭より難易度は低いと分かり、
気持ち的なハードルが下がったわけですが
環島の神様は見逃しません。
め っ ち ゃ 雨 。
朝6時には起床して
しばらく様子を見てましたが、
雨が止む気配はゼロ。。
このまま待っていても仕方ないので、
朝7時半ごろに出発。
念のためコンビニでパワージェルを購入し、
気持ちだけは万全の状態で登坂開始です!
牡丹社事件紀念公園
日本人の知らない歴史
出発してから約6kmのところに、
大きくひらけた公園がありました。
牡丹社事件紀念公園
1870年代に起きたこの「牡丹社事件」とは、
台湾先住民のパイワン族に対して
日本の軍が出兵した出来事のことを言います。
総参戦者数は5,000人、
最終的な死亡者数は547人。
(感染病による死者含む)
決して小競り合いで終わるような
小さな規模の交戦ではありませんでした。
この事件の流れについて
事細かくこの公園で解説されています。
(日本語訳もあります)
事件のきっかけ
この牡丹社事件について
できるだけ簡単に説明してみます。
1871年、琉球王国に年貢を納めたあと
帰途についていた宮古島の島民66人が遭難し、
当時まだ清国の領地だった台湾に漂着。
生存者たちは台湾の山中を彷徨い歩き、
200人規模の先住民部落に迷い込みます。
飢えていた生存者たちは作物を奪取するも、
部落の頭目は彼らをもてなすことにしました。
ただ、文化・習俗の誤解や言語の障壁により、
疑念を抱いた生存者たちは逃走してしまいます。
これを非礼と感じた部落の人々は攻撃を開始。
200人の部落に外国から66人が侵入してきて
もてなそうとしたら逃げられた。
これを考えるとやむを得ない決断に感じます。
そして漢民族の商人が仲介しようとするも
意思疎通ができないことでの混乱や不信感の中、
宮古島島民54人が殺害されてしまいます。
これを受けて日本陸軍中将の西郷従道が
台湾出兵を敢行し、3000人を出動させます。
(西郷従道は隆盛の弟)
その後、激しい交戦が繰り広げられ
結果的に日本・清国・琉球・西欧列強が絡む、
歴史的なターニングポイントとなりました。
こうした一連の出来事が
「牡丹社事件」と呼ばれています。
と、ここまで偉そうに書きましたが、
私もこの公園を訪れるまでは
この事件について知りませんでした。
台湾に対してこんなに日本人が
深く関わっていたというのに。。
自分の無知さを痛感しながら、
この牡丹社事件紀念公園に
しばらく滞在していました。
観光バス
これだけ大きい公園なので、
観光で立ち寄るスポットでもあるようです。
大型の観光バスが何台か停車して、
台湾人の団体観光客が
公園を散策していました。
ちょうど自転車に乗ろうとした私に、
「自転車!?どこから来たの??」
と何人も興味津々に質問してきてくれました。
見知らぬ人にも躊躇なく声をかける。
さすが台湾人、です。
また、この牡丹社事件紀念公園の近くに
この事件を伝える文化施設が建てられます。
2023年の年末に完成予定だそうです。
牡丹社事件の激戦地 歴史伝える文化施設が起工(フォーカス台湾)
次に環島するときには、
忘れずに訪れたいと思います。
峠のてっぺんで
壽卡鐵馬驛站
車城を出発してから約3時間。
相変わらず雨は降り続けてますが、
どうにか壽卡鐵馬驛站に到着。
牡丹社事件紀念公園に
30分ほど滞在いたことを考えると、
なかなかいいペースで登れました。
最高海抜地点460mを登り切ったことで
込み上げてくる達成感にどっぷり浸る…
はずだったんですが、
さ む い 。
雨に濡れた寒さでそれどころじゃない。
5月の台湾とはいえ雨の峠は冷えます。
建物の中に避難してしばらく休憩です。
日本人サイクリストとの出会い
暖をとって体力は回復できましたし、
建物の中には空気入れもあったので
自転車の空気圧も完璧。
そろそろ出発しようとしていたとき、
続々と到着してくるサイクリストたちの一部から
こんな会話が聞こえてきました。
"Where are you from?"
"Ah, I am Japanese. I can't speak Chinese. hahaha"
んお?日本人?
すかさずその人に日本語で声を掛けると、
やはり超自然な日本語が返ってきました。
あぁ〜、1週間ぶりの日本語じゃぁ〜。
この人は今回初めての台湾にも関わらず
マイ自転車を日本から持ち込んで
環島をしているとのこと。
おぉ、強者のスメルがしますぞ。。
初台湾で環島とは、、
すごい人もいるもんだ。
(ちなみに私は6回目の来台で環島)
お互いこの日の目的地が台東と分かり、
台東で夜にまた落ち合うことに。
この方とは台北に戻るまで、
何度も行動を共にさせていただいたので
本ブログでは峠さん(仮名)とします。
こういう出会いも旅の醍醐味ですね。
本当に台湾?
壽卡鐵馬驛站を出発したあと、
10kmほどの下り坂が続きます。
まだ雨は降っていたので
スリップしないよう気をつけながら、
軽快に下って行きます。
下っていた時間は30分ほどですが、
下りで雨と風をモロに食らい続けて
急速に体温が奪われていきました。
ユニクロの撥水パーカーを着てましたが
レインコートのように防水ではないため、
もはや雨水が中まで浸水。
台湾にいることを忘れてしまうくらい
体の芯から冷えまくってました。
下りが終わったころコンビニに駆け込み、
Lサイズのホットコーヒーを注文。
冷えた体に染み渡るぅ〜。
5月の台湾とはいえ、
雨と下りのダブルパンチは
破壊力ばつぐんです。
荷物の量との葛藤にはなりますが、
防寒防水の装備も重要ですね。。
台東への道
隠れ難所
予想外の寒さに見舞われましたが、
無事に峠を越えることができました。
ということは、
台湾の西部から東部の中間にある
山を越えたわけです。
頑張ったご褒美と言わんばかりに、
美しい曲線を描く海岸線が迎えてくれます。
この旅はじめて見る台湾の東海岸ですね。
この頃には雨も止んできました
さて、台東まであと約60km。
距離はあるけどほぼ平坦なはずです。
頑張りましょー!
…と元気に漕ぎ始めたわけですが、
この日の難関は峠だけではありませんでした。。
分かりますか?
波打ち際の地形を
自然のまま見事に活かしたこの道。
縦に横にうねうねと曲がりくねっていて
全然平坦じゃない。。
おかしい。
最初に把握していた情報と違うやんけ。
さぁここでリプレイです。
改めてBikeRollで勾配を見てみましょう。
うん、やっぱり後半にも坂あるね☆
最初に確認していた勾配の情報では、
メインの峠の高さに気を取られて
後半のこの小刻みな坂道に気づきませんでした。
緩やかだけど頻繁に起こるアップダウン、
地味にキツい。。
台東までの約60km、
ずっとこの海岸線沿いの道が続きます。
あとさらに怖いのが、
ガードレールのすぐ外側は
いわゆる崖っぷち。
トラックなど大型車も多く通っていたので
何かの拍子でバランス崩したら
簡単に落っこちてしまいそう。
場所によっては
下の浜辺まで結構高さもあって
なかなかデンジャラス。
少しの距離ならまだしも、
60kmをこの恐怖とお付き合いするのは、
なかなかにメンタル削られます。
峠を越えた後のこの台東への道、
かなり疲れました。
台東到着
峠を越えてから約3時間半。
休憩を挟みながら何とか台東に到着しました。
台東といえば熱気球で有名ですね。
シーズンは確か6〜8月。
以前に鉄道で環島したときに
台東駅で降りたことはあるんですが、
駅から市街地まで遠かったので素通り。
なので台東の街に来るのは今回が初めて。
なかなかに栄えてる印象です。
壽卡(寿峠)鐵馬驛站でお会いした
日本人の峠さんと宿で待ち合わせたあと、
台東グルメ探索に繰り出します。
台東名物「米苔目」
台東名物を調べてみると、
米苔目(ミータイムー)という
お米の麺が有名なのだそうです。
米麺というと、
ベトナムのフォー的な感じでしょうか?
とりあえず台東で一番の有名店に行ってみました。
榕樹下米苔目
なんとクチコミ数が1万を超える超人気店!
閉店30分前の19時に着いたのですが、
レジ前はまだ注文待ちの列ができていました。
店名の「榕樹」はガジュマルの木という意味で、
店前に昔あったガジュマルの大樹に由来。
創業60年以上を誇る老舗らしいのですが、
店内は清潔感がある今風なおしゃれさ。
雰囲気ある原住民の絵画がポイント。
お店は縦長なので席数は潤沢。
回転も早いので行列が長くても、
すぐ席は空くはずです。
レジ前で注文をしたあとにレシートをもらい、
そこに書かれた数字が電光板に表示されたら
料理を受け取りに行く仕組み。
私が注文したのは汁なし米苔目。
大椀で60元(小椀は55元でほぼ値段は同じ笑)
このお店の特徴は、
台湾では珍しく鰹節を使っているところ。
もし「汁あり」ならうどんに似てるかも?
汁なし米苔目は、
うどんと富士宮焼きそばの中間って感じ。
例えが微妙ですね。笑
お米特有のモチモチさのある麺が
鰹節やタレとよく絡まって美味しかったです。
日本の味が恋しくなったときに食べると
うまさ倍増するはずです。
人気店でいつも混み合ってるようですが
回転は早いようですので、
ぜひ台東に来たらお試しください。
何かが足りないなぁ
さて。
峠さんと米苔目を一緒に食べましたが、
この出会いを祝すには何か物足りない。
あ、ビール飲まないと!
ということでお宿のすぐ近くにあった、
こちらの中華料理屋さんで一杯やります。
南北餃子館
地元密着型のお店のようですが、
☆4.3となかなかの好レビュー。
いざ入店!と思った矢先、
店先でスプレーとライターを使って
お店の人がなぜか火炎放射している。。
よくよく見てみると、
店外の電灯に群がる見覚えのある虫が。
はい、環島Day1でお馴染みとなった
あのシロアリさんたちです。
(雨降ってたからお引越し中だったのかもね)
客を尻目に思いきり火炎放射してるのも
何だか地元感があって逆に清々しい。笑
それでは、気を取り直して入店です。
ちょっとだけ日本語が話せる
可愛らしいお店のおばちゃんがお出迎え。
意外と日本人も来てるのかな?
店内の様子と、
ざっとオーダーした料理はこんな感じ。
蒸し餃子1籠100元、水餃子は1個7元
やっぱり台湾の水餃子は美味しいですね!
台湾といえば有名な小籠包にも
引けを取らないと勝手に感じてます。
これだけ注文して、
2人で390元( = 約1,755円)。
コスパも素敵です。
「台湾は水餃子がウマいんですよ〜!」
「台湾だと焼き餃子ってあんまりないんですよね」
「ビールは冷蔵庫から自分で取ってきてOKです」
…なんて、初台湾の峠さんに向かって、
台湾情報をひけらかす私。
台湾を好きになって欲しい一心でしたが、
普通にうっとおしかったと思います。笑
何はともあれ台湾ビールで
「出会いを祝して乾杯!」できたし、
餃子も美味しかったので大満足です。
それでは、このお店から目と鼻の先にある
今日のお宿に戻ります。
今日のお宿
環島の難関をクリアして
ホッとひと息つかせてくれる、
今日のお宿はこちら。
(Booking.comに飛びます)
宿名に「ホテル」とついてますが、
自転車旅の心強い味方である
ドミトリールームも完備(?)です。
そして「Hotel 2」はどうやら2号館の意味で、
建てられたばかりなのかとても綺麗。
それこそホテルのようなおしゃれさです。
(上の画像は1号館でフロントは共通)
2号館の1階はカフェになっています。
部屋の中も落ち着いた雰囲気で、
嬉しいことにベッドの上には
タオルとボトルの水が置かれていました。
マイタオルを使わなくて済むのは
地味に助かります。
(洗濯物を減らせるので)
さらにさらに!
このお宿は朝食付き。
おかずの種類が豊富で美味しかったです。
1つだけ難点を挙げるとするなら、
シャワーとトイレ、近すぎ問題。
シャワーを浴びた後は
トイレびしょ濡れ不可避。
運よく同室の人はおらず1人使用だったので、
そこまで気をつかわずに済んだのが救い。
このタイプに出くわしたときに
シャワーを浴びてもトイレが濡れない方法あれば
ぜひコメントで教えてください。笑
1泊 720元 / ドミトリールーム(平日料金)
価格:★★★★☆
接客:★★★★☆
立地:★★★★☆
施設:★★★★☆
充電:★★★★★
個人的評価:4.2 / 5.0
【備考】
・フロント横に自転車駐輪可
・ランドリーなし
・ベッド脇に電源コンセントあり
※金額は変わる可能性あるので参考程度に
【Day 9】今日の出費・走行距離
コンビニでパワージェル数個 461元
コンビニでコーヒーとパン 126元
米苔目(大) 60元
餃子+ビール 180元(1人分)
Home Rest Hotel 2(台東鴻瑞輕旅) 720元
コンビニでビールとおつまみ 73元
合計 1,620元
= 日本円換算 7,290円 (1元=4.5円)
走行距離:113.59 km
= 累計距離:853.49 / 1,217.88 km
次の目的地は玉里!