キーポイント
乾為天は六爻すべてが陽からなる全陽の卦です。
陽は力強さの象徴ですので、乾為天が示すのは剛健のなかの剛健、尊高のなかの尊高。非常に強く盛んなエネルギーを持っています。
それゆえ、人事的に見ると地位・品位や名誉のある大人物には吉となる卦ですが、一般の人がこの卦を得た場合は位負けして凶となることが多いので注意しましょう。
乾為天(けんいてん)について
卦辞(乾為天の概要)
乾は元(おお)いに亨る。貞(ただ)しきに利あり。
望みはおおいに通る。しかし正しい動機を持続することが条件である。
六十四卦における配列(序卦伝)
天地ありて然る後に万物生ず。
六十四卦において、天地である乾為天と坤為地から始まり、このあとに万物(他の卦)が当てはめられていきます。
乾為天の占考
関連ワード
剛健、創始、高尚、君臨、命令、偉大、横暴、多忙不休、常人には凶、自信過剰
運勢
大人物は風雲に乗じて飛躍する。拡大のとき。
状況によっては多忙、進みすぎて進退に苦しむタイミング。また、すでに盛況を迎えているときは衰退への兆し。
願望
凡人には望みが高すぎて空転する恐れ。多欲は失望に変わるため、退いて常を守ること。
恋愛・関係
お互いに主張が強く親和が得られず。今は万事控えめにする方が良い。
結婚
相互が高望みしてまとまり難い。結婚を迎えられたとしても、婚後は特に女性が強く衝突しがち。離別もあり。
性格
剛健、積極的、自尊心が強い、リーダーシップ、高慢
事業・方策
力量以上の拡大は荷が重い。元の通りにした方が良い。
住居
必要以上の新築、増改築は見合わすべき。移転は先に延ばすが吉。
相場
低落が続いていた場合はいったん底を打つ。上昇傾向にあるものは天井圏内へ。ただし、性急な判断は控えるよう。
旅行
観光はトラブルあり凶。公的なもの、用のあるものは吉。
病気
頭痛、脳出血、頭部のけが、胸部・心臓の疾患、骨の疾患(乾は骨、坤は肉)、大熱。病勢が激変する恐れがあるため治療を怠らないよう注意。
乾為天の爻辞
※爻は下から数え、九は陽・六は陰を表す
(例えば「初九」は一番下の陽の爻のこと)
初九
潜竜なり。用うるなかれ。
(陽の象徴である竜が一番下の地位に潜んでおり、動くことができない。)
→ 性急にならず、たとえ力量があっても行動せず時を待つべし。
九二
見竜(けんりょう)田(でん)にあり。大人(たいじん)を見るに利あり。
(地中に潜んでいた竜が現れた。偉大な人のような徳を心掛けるといい。)
→ 目上の信頼を受けられるよう、行動を省み公明正大に進むことが大切。
九三
君子終日乾々、夕べまで惕若(てきじゃく)たり。厲(あやう)けれども咎(とが)なし。
(有徳の人は本性剛健であるため一日中発展の努力を止めず、夕べになってもなお過失がなかったか恐れる。このように気を付けていれば危険な地位にいながらも咎めは免れるだろう。)
→ 研鑽を継続させ、さらに充実させるよう努力を怠らないこと。過ちを犯さないよう気を付けるべし。
九四
或いは踊りて淵にあり。咎(とが)なし。
(竜が飛ぼうか飛ぶまいか、決心がつかないまま淵にいる。時を見極めて進退すれば咎めはない。)
→ 迷いや疑惑が生じるが、大道に従って進むこと。進退・決断に最も大切な時。
九五
飛竜(ひりょう)天にあり、大人(たいじん)を見るに利あり。
(竜が時と所を得て天を飛んでいる。偉大な人のような徳を心掛けるといい。)
→ 運気盛大の時。自分の才能を発揮して成果をあげられる。ただし常人には重荷となる。
上九
亢竜(こうりょう)なり。悔いあり。
(竜は昇りすぎて降りられなくなった。動けば後悔する。)
→ これ以上の拡大は失敗のもととなるため、現状維持に努めること。欲望を捨てて謙虚な気持ちを持つべし。
用九
群竜(ぐんりょう)首(かしら)なきを見る。吉なり。
(竜がむらがっているが頭がいない。先頭になろうとしないことが吉である。)
→ 剛強な力を使って先頭に立とうとすると凶を招く。謙虚さをもって穏やかな関係を保つ態度が吉となる。
※乾為天と坤為地のみ用九・用六の辞が付与されている。これは両卦を用いて判断し行動に移す際に心掛けるべき原理原則である
(参考:鹿島秀峰「現代易占詳解」、本田濟「易」ほか)