キーポイント
乾為天、坤為地の二卦が交わったあとに物を生み出そうとする卦が水雷屯。
震(☳)が動きを表しているが、その上には坎(☵)があり悩みを伴っている。
水雷屯は天地創造の卦であり、生みの苦しみを意味します。誠実にして機を待ち、短慮は控える時です。
水雷屯(すいらいちゅん)について
卦辞(水雷屯の概要)
屯は元(おお)いに亨る。貞(ただ)しきに利あり。用(もっ)て往くところあるなかれ。侯(きみ)を建つるに利あり。
望みは大いに通る。正しい生き方の継続を固守することで吉あり。ただし、急いで進んではいけない。まずは協力者の助けを得るべし。
六十四卦における配列(序卦伝)
天地の間に盈(み)つる者はただ万物なり。故にこれを受くるに屯(ちゅん)をもってす。屯とは盈つるなり。屯とは物の始めて生ずるなり。
乾坤の間にみちるものはただ万物だけである。ゆえにこれを受けるに屯をもってする。屯とはみちるである。屯とは物が始めて産み出されることである。
水雷屯の占考
関連ワード
創始の困難、悩み、苦しみ、短慮、忍耐、前方に障害
運勢
あらゆることを始めるには、困難が伴う。難しい境遇を乗り越えるために努力が必要な時。
今は困難であるが、のちに光明が見える。
願望
悩みや難しさが多いが、辛抱の後に思いは叶う。
恋愛・関係
障害があり当分は思い通りにならない仲。よき理解者を得ると吉。
結婚
進展しにくい。結婚してもしばらく困難あり。辛抱の後に成立する。
性格
内に秘めているものは多いが、内向的な性格。才能があるものの下積みに苦しむ。
事業・方策
新規事業には苦労が伴うが、将来的に実る。既存のことは前進に難あり。
障害を取り去る努力が必要となる。
住居
悩みがある時。新築は思うように進まず。
相場
環境や材料が良くないが底堅い。次第に上昇する兆しはあるものの、油断は禁物。
旅行
旅行先でトラブルが起きやすい。可能なら機を改める方が良い。
病気
消化不良、食もたれ、腎臓、下痢、女性はホルモンバランスの乱れ、子どもはてんかん、歩行が困難となる病気。
初期症状が明確でなく判断しづらい。急変はしないが長引くケースが多い。湿気、寒気、冷気に注意。
水雷屯の爻辞
※爻は下から数え、九は陽・六は陰を表す
(例えば「初九」は一番下の陽の爻のこと)
初九
磐桓(はんかん)す。貞(てい)に居(お)るに利あり。侯(きみ)を建つるに利あり。
(進みにくくて躊躇する。正しい態度を固守すると良い。有力な協力者と関係を作るべし。)
→ 前途に困難がある。自らは行動に移さず、むしろ動かない方が良い。謙虚な姿勢をもって、協力者との人間関係を円滑にすると良い。
六二
屯如(じゅんじょ)たり。邅如(てんじょ)たり。乗馬班如(ばんじょ)たり。寇(あだ)するにあらず。婚媾(こんこう)せんとす。女子貞(てい)にして字せず。十年にして乃(すなわ)ち字す。
(苦しむ。立ち戻る。馬に乗っても思い通りの方向に進まない。しかし、害を与えるというものではない。女性は正道を守ることで意中の男性と結ばれない。しかし十年経てば障害が取り払われようやく結ばれる。)
→ 困難の中にあって進退定まらず、らちがあかない時。苦労に負けず継続をすることで、時間は掛かるが開運に至る。女性の婚姻も同様に時間が掛かる。
六三
鹿に即(つ)くに虞(ぐ)なし。ただ林中に入る。君子ほとんど舎(す)つるに如かず。往けば吝(りん)。
(鹿を追いかけるのに虞人(追い込む役)がいないようなもの。ただ林の中に迷い込むだけである。賢い人としてはきっと鹿を捨て置いた方がましだろう。追うのなら恥をかく。)
→ 目標を見失って努力が空回りしがちな時。過ちに気づいたらすぐに引き返すべし。無理に進めば困窮する。
六四
乗馬班如(ばんじょ)たり。婚媾(こんこう)を求む。往けば吉、利あらざるなし。
(馬に乗っても思い通りの方向に進まない。配偶者を求め、一緒に進んで困難を乗り越えるならば吉である。)
→ 進退に迷う時ではあるが、特に目下の協力者と力を合わせると良い。目下の人に求婚することは吉。
九五
その膏(あぶら)を屯(ちゅん)す。小貞は吉。大貞は凶。
(ほどこすべき恵み(あぶら)を持っているのに出し渋っている。小さいことなら正道を守れば吉であるが、大きいことは正道を守っても凶を免れない。)
→ 才能はあるがタイミングに恵まれない。思うように事が運ばない。小さな望みは叶うが、無理をして大きなことをすると挫折する。好機が来るのを待つ方が良い。
上六
乗馬班如(ばんじょ)たり。泣血(きゅうけつ)漣如(れんじょ)たり。
(馬に乗っても思い通りの方向に進まない。泣き続けて涙が出なくなり、血の涙が流れ続ける。)
→ タイミングに恵まれず、進退に苦しみ嘆き悲しむ時。新しいことに手出しせずに、誠意をもって現状の好転に努めるべし。
(参考:鹿島秀峰「現代易占詳解」、本田濟「易」ほか)