六十四卦

59. 風水渙(ふうすいかん) -易経・六十四卦-

2021年3月8日

キーポイント

巽(☴)の風が吹き、坎(☵)の水がまき散らされる卦です。

台風が過ぎたあとの晴天のように、苦労が散って晴れやかな気分になることを表しています。

風水渙は、今の時期は平常に戻りつつあるものの、それ以前には憂苦があったことを察せられるでしょう。

また、巽(☴)という木の舟が坎(☵)という水の上を進むという意味もあり、遠方・海外との往来を示すこともあります。

 

風水渙(ふうすいかん)について

卦辞(風水渙の概要)

渙(かん)は、亨(とお)る。王有廟(ゆうびょう)に仮(いた)る。大川(たいせん)を渉(わた)るに利あり。貞(ただ)しきに利あり。

渙では、願いことが叶う。王が廟に至ることで、渙散していた先祖の霊魂が再び結集するだろう。大きな川を渡るような冒険をしても利益がある。ただし、正道を守ることができる場合にのみ利益がある。

 

六十四卦における配列(序卦伝)

兌とは説ぶなり。説びて後にこれを散らす。故にこれを受くるに渙(かん)をもってす。

(兌為沢による)兌とは悦ぶことである。悦ぶことで憂鬱な気分が散らされる。ゆえにこれを受けるに渙をもって表す。

 

風水渙の占考

関連ワード

渙散、離散、悩みが散る、冒険への出発、遠方への船出

 

運勢

これまで困難や苦労を抱えていた人は、苦しい状況から解放されて運気が上昇する時。

遠出をするか、遠くに住む人と交流すると良い。

 

願望

先祖の霊を祭り、憂苦を散らすことができれば叶う。

選択肢が複数あると気が散ってしまうので、一つのことに集中すべし。

 

恋愛・関係

離散の意味があるため、相手との関係を解消することがある。

これまで関係がなかった人には、良い出会いあり。

 

結婚

離散の意味があるため、縁談はまとまらず解消する。

これまで機会に恵まれなかった人には、縁談が舞い込むことあり。

 

性格

一つのことに集中できず、気持ちの移り変わりが激しい人。

物事に執着しないさっぱりとした性格の人。

生まれ故郷から離れて遠方に出向くのが好きな人。

 

事業・方策

今あるものを一新すべし。

古いものを捨て去ることで、新しい経路を開拓するのが良い。

 

住居

新築は吉。

現状の環境が悪い場合は、移転も良い。

 

相場

人気が離散することにより下落する傾向。

これまで人気がなく安値にあったものに関しては、上昇の動きあり。

 

旅行

遠方への旅行が吉。

飛行機や船を使う旅だとさらに良い。

 

病気

風邪、腎臓・膀胱・尿道などの疾病、腸の疾病、血液の病、生殖器の疾病、痔、食中毒、下痢、耳・鼻の疾病など。

多くの場合は快方に向かうが、根が強い重病は治療が長引く。

 

風水渙の爻辞

※爻は下から数え、九は陽・六は陰を表す
 (例えば「初九」は一番下の陽の爻のこと)

初六

用(もっ)て拯(すく)う馬壮(さか)んなれば、吉。

(強壮な馬に救ってもらえれば離散する者を連れ戻すことができるので、吉である。)

→ 目上の有力な人を味方にして、その人に従うことができれば、離散を食い止めることができて吉である。

 

九二

渙(かん)のとき其(そ)の机(おしま)に(はし)る。悔(くい)亡(ほろ)ぶ。

(離散する状況の時に、落ち着ける場所に走り着いた。悔いはない。)

→ 困難な状況の中でも、頼りになる人やものを得ることができる。今後に希望が持てる時。

 

六三

(そ)の躬(み)を渙(かん)す。悔(くい)なし。

(己の私利私欲を散じて、天下のために働く。悔いはない。)

→ 見栄や体裁などの利己的な感情を捨てて、自己犠牲の精神で困難を打開するよう努力すること。そうすれば運気が開ける。

 

六四

其(そ)の羣(むれ)を渙(かん)す元吉(げんきつ)なり。渙(かん)して丘あり、夷(い)の思う所にあらず。

(私党を解散させる。大いに吉である。私党を解散させたことで、さらに大きな団結ができる。人々が集まって丘のようになるほどである。これは常人が考えが及ぶものではない。)

→ 私的な集まりを解散させて、人としての筋を通す時。その行為がさらに大きな規模の集まりを形成することとなり、大きな成功のもととなる。

 

九五

渙(かん)のとき其(そ)の大号(たいごう)を汗のごとくにす。王居(おうきょ)を渙(かん)すれば、咎(とが)なし。

(天下が離散するときに、王が的確な命令を発す。王の私財を民に散ずるならば天下離散を回避できるため、咎めはないだろう。)

→ より大きな富を得るために、今ある私財を一度捨て去るべき時。ただしそれができるのは、人の上に立って重責を担うことができる人物のみである。

 

上九

其(そ)の血(いたみ)を渙(かん)す。去りて逖(とお)く出(い)ず。咎(とが)なし。

(障害となるものを離散させる。被害を受ける場所から去って遠く外に出ていくことで、咎めはない。)

→ 困難や苦労から解放されるためには、その原因となるものから遠く離れること。影響や干渉を受けない場所に移ることができれば、事なきを得る。

 

(参考:鹿島秀峰「現代易占詳解」、本田濟「易」ほか)

  • この記事を書いた人

しんのすけ

1986年、愛知生まれ。アメリカの大学卒業。金融危機下でなんとか就職するも、会社の歯車として働くことに疑問を感じていた。その後「やりたいことをやる」という信念のもと、現在に至るまで7社5職種+独立・起業のキャリアを経験。プライベートでは易学の研究や中国語の勉強も。台湾が大好き。

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