六十四卦

4. 山水蒙(さんすいもう) -易経・六十四卦-

2020年9月9日

キーポイント

山(☶)の下に水(☵)があり、初めは山の中に湧いた小川が、流れを集めながら最終的には大きな河となる卦です。

小さな子どもも時が経てば立派に成長し、知恵が備わっていきます。

天地創造の始まりであるため、物の見分けがつかず目の前は暗く感じるもの。辛抱の時ですが、前途の楽しみがあります。

 

山水蒙(さんすいもう)について

卦辞(山水蒙の概要)

蒙は、亨る。我童蒙(どうもう)を求むるにあらず。童蒙来りて我に求む。初筮(しょぜい)は告ぐ。再三すれば瀆(けが)る。瀆るれば告げず。貞(ただ)しきに利あり。

望みは通る。自分が幼く蒙昧な者を求めているわけではない。幼い者が自分に教えを請いに来るのである。一つのことを占ってくれというなら教えられる。何度も占ってくれというのならそれは神性さを瀆すもの。そのようなときには教えてやらない。望みを叶えるためには教えを享受し、正道を守らなければならない。

 

六十四卦における配列(序卦伝)

物生ずれば必ず蒙(もう)なり。故にこれを受くるに蒙をもってす。蒙とは蒙(おろ)かなり。物のおさなきなり。

(水雷屯により)物が生み出されればかならず蒙(幼いこと)である。ゆえにこれを受けるに蒙をもってする。蒙とはおろかである。物がおさないのである。

 

山水蒙の占考

関連ワード

蒙昧、幼稚、稚拙、初心、初歩、気迷い、思慮不足による失敗、努力と助力の相乗効果、子どもの心配

 

運勢

初めはらちが明かないことも、次第に伸展していく。現在の研鑽が将来の吉凶に大きく影響する。

 

願望

方針が立てられず、今すぐは叶わない。努力を重ねる時。目上の助言に従うのが良い。

 

恋愛・関係

人間性が未熟なため悩みが多く親しくなれない。家庭の事情のため進展しないこともある。

 

結婚

表面に出ない障害や悩み事がある。そのまま結婚してしまうと先行き悪い。時期尚早のため延期するのが良い。

 

性格

情に厚く誠実だが、抜けているところがあり理解力に乏しい。

 

事業・方策

方針が十分でなく幼稚。目上の指導を仰ぐべし。

 

住居

不備の多い家。特に雨漏りに注意。移転の場合は当分見合わす方が良い。

 

相場

好材料がなく低迷を続けるが、長期的には期待が持てる。手出しをするなら当分は慎重に。

 

旅行

心配事あり、取り止める方が良い。旅先では不愉快なことが多く、天気も良くない。

 

病気

ノイローゼ、神経衰弱、耳鼻の病、肺の疾患、小腸の疾患、下痢、冷え性、腎臓病、手足の痛み、動脈硬化、女性ホルモンの乱れ。

外見では判断しづらい内面の病気。薬の効き目が弱く、治療は長引く。

 

山水蒙の爻辞

※爻は下から数え、九は陽・六は陰を表す
 (例えば「初九」は一番下の陽の爻のこと)

初六

蒙を発(ひら)く。用(もっ)て人を刑し、用(もっ)て桎梏(しつこく)を説くに利あり。以て往けば吝(りん)。

(蒙を啓発する。まずは刑罰を与え、懲りたところで手かせ足かせを外して、その後の行いを観察するのが良い。刑罰を与え続ければ反抗されて恥をかくだろう。)

→ 法・規則・約束に従い、正道を守ることが大切。物事の良し悪しをいい加減にせず明確にするべき時。妥協は後悔のもととなる。ただし、厳しくしすぎると恨みを買う恐れあり。

 

九二

蒙を包(か)ぬ、吉なり。婦(つま)を納(い)るるに、吉なり。子、家を克(よ)くす。

(蒙を包容することで吉である。(六五を婦人と見立て)妻の蒙昧さを受け入れると吉である。(六五を親と見立て)自らが子となるならば家を良くする。)

→ 蒙の卦において九二に応じるのは六五であることから、六五の蒙昧さを受け入れると吉である。運気が上がらない時ではあるが、懐を広くするべし。その人徳が良縁に繋がり吉となる。

※六十四卦では応じる爻が定められており、それぞれ「初爻×四爻」「二爻×五爻」「三爻×上爻」となります。これを応爻と言います。

 

六三

女を取(めと)るに用うるなかれ。金夫(きんぷ)を見て、躬(み)を有(たも)たず。利するところなし。

(この爻でもって女を娶ってはいけない。金のある男に目がくらんで、自分の身を忘れてついていくような女である。良いことは一つもない。)

→ 利己的なために方針を誤り、信用を失って自ら転落・失敗する。思慮なく、自分の欲望に従って衝動的に動いてはいけない。家庭が不穏になる時。結婚は最も凶。

 

六四

蒙に困(くる)しむ、吝(りん)なり。

(六四自身が陰爻で力がなく、応爻となる初六も助けにならないため蒙昧さに苦しむ。この爻を得た場合は恥ずべきである。)

→ 思慮不足のため何事にも失敗する時。人間関係の断絶、孤立無援に注意する。良き師を求めて啓蒙を受けて研鑽すべし。

 

六五

童蒙、吉なり。

(六五は高い位置にありながら応爻の九二に教えを乞うている。こうした蒙昧ながら純粋な姿勢が吉となる。)

→ 良き師を得て、大いに能力を磨いて実力を身に着ける時。賢者の教えを受けて自分の欠点を排除し、困難を脱する。

 

上九

蒙を撃つ。寇(あだ)をなすに利あらず、寇を禦(ふせ)ぐに利あり。

(一番高い位置に陽爻があるため、蒙昧さを撃つほどの剛の強さがある。ただし越境して攻撃すること(寇)は度が過ぎると良くない。逆に外部からの攻撃を防ぐことができると吉である。)

→ 蒙昧さを取り除こうとすることは良いことだが、行き過ぎが起きやすい。相手と向かい合うときには、寛容さと温情をもって理知的に対応すべし。盗難・暴漢など思わぬ危険に注意。

 

(参考:鹿島秀峰「現代易占詳解」、本田濟「易」ほか)

  • この記事を書いた人

しんのすけ

1986年、愛知生まれ。アメリカの大学卒業。金融危機下でなんとか就職するも、会社の歯車として働くことに疑問を感じていた。その後「やりたいことをやる」という信念のもと、現在に至るまで7社5職種+独立・起業のキャリアを経験。プライベートでは易学の研究や中国語の勉強も。台湾が大好き。

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