六十四卦

30. 離為火(りいか) -易経・六十四卦-

2020年10月12日

キーポイント

火には形がありませんが、他の物にくっついたり離れたりして燃えることで形を表しています。

それゆえに、離には「火」や「明るい」といった意味のほかに、「付く」「離れる」という意味もあります。

移り気があり、目まぐるしく変化することがあるので、物事に一喜一憂せず穏やかに受け入れる姿勢を持つと良いでしょう。

 

離為火(りいか)について

卦辞(離為火の概要)

離は、貞(ただ)しきに利あり。亨(とお)る。牝牛を畜(やしな)う、吉なり。

離は、正道を守れば利益があり、望み事は叶う。穏やかな牝牛のように、柔順の徳を養えば吉を得るだろう。

 

六十四卦における配列(序卦伝)

とは陥(おちい)るなり。陥れば必ず麗(つ)くところあり。故にこれを受くるに離(り)をもってす。離とは麗くなり。

(坎為水による)坎は陥るということである。穴に落ちれば必ずどこかに付く場所がある。ゆえにこれを受けるに離をもって表す。離は付くことである。

 

離為火の占考

関連ワード

付く、離れる、離別、変化、上昇、明るい、目立つ、顕著、美しい、知恵。

 

運勢

運気は上昇傾向にあるが、移り気が多く安定性に欠ける。

外見は華やかだが、内面が充実していない。

また、人との離別ある時。

 

願望

学問、芸術、芸能に関することは叶う。

その他のことは、正当性のあることであれば上手くいく。

 

恋愛・関係

熱中しやすい関係だが、気持ちが移りやすい。

熱しやすく冷めやすい気質。

これまで親しかった相手とは離別の気配あり、新しい相手との出会いが生まれる時。

 

結婚

縁談の選択肢が他にもあり、選択に迷う。

表面上は良く見えるが、内面に隠し事あり。結婚の前によく調べること。

婚後も、見た目は華やかな生活に見えるが内面充実せずに崩壊する恐れあり。

離別の可能性もある。再婚には良い。

 

性格

知恵やセンスがある人。芸術や芸能の才能あり。

熱しやすく冷めやすい。むら気がある。

情熱的な性格。

 

事業・方策

見た目は盛大に見えて、実情は不安定。

その事業を良く知る人物に素直に相談すると良い。

 

住居

移転の気配あり。よい物件があれば移転すると良い。

 

相場

上昇を繰り返すが、安定性なく何度も乱高下する。

進退の決定を迅速に。

 

旅行

調子にのって赤字にならないように注意。

旅先では、争いごとや火難に気を付けること。

 

病気

眼病、ヒステリー、心臓病、乳房の疾患、ウイルス性・流行性の疾病、高熱の出る疾病。

病勢は変化が著しい。原因を慎重に見極めるべし。

 

離為火の爻辞

※爻は下から数え、九は陽・六は陰を表す
 (例えば「初九」は一番下の陽の爻のこと)

初九

履(ふ)むこと錯然(さくぜん)たり。これを敬(つつし)むときは咎(とが)なし

(方角が定まらないまま足を踏み出そうとする。焦らずに行動を慎むことができれば、咎めはない。)

→ 軽率な行動は状況を悪化させる原因となる。機が熟すまでしっかりと検討すること。

 

六二

黄離(こうり)。元吉(げんきつ)なり

(黄色は、五行の中央である土の色である。下の卦(内卦)の中央にある六二が黄を得れば、大いに吉である。)

→ 知恵や才能を発揮して、名声名誉を大いに得ることができる。文化的な活動に関わるとさらに吉。他のことに気持ちを移さずに、目の前のことに集中、努力すること。

 

九三

日昃(にっそく)の離なり。缶(ほとぎ)を鼓(う)ちて歌わずば、大耋(だいてつ)の嗟(なげ)きあらん。凶

(日が西に傾いており、今にも沈もうとしている。このような終わりの時に酒甕を叩いて歌えるくらい楽しむ心境でなければ、老いて朽ちる嘆きがあるだけである。凶である。)

→ 運気が傾いている時であり、何事も上手くいかない。過去の栄光を思い出して嘆くのではなく、今を生きることに集中して楽しむこと。ただし、無謀な行いは控えるべし。

 

九四

突如それ来如(らいじょ)。焚如(はんじょ)、死如(しじょ)、棄如(きじょ)。

(前の君主が没し、次の君主が就任しようというときに、君主の座を狙う邪悪な家臣が突然やって来たようなものである。そのような人物は、焼かれて捨てられるような目に遭うだろう。)

→ 急で軽率な行いをすれば、周囲から憎まれて居場所がなくなる。災難、妨害、障害、事故など悪いことが重なる時。言うまでもなく凶であるため、静かに衰運が去るのを待つこと。

 

六五

涕(なみだ)を出(いだ)すこと沱若(たじゃく)たり。戚(うれ)いて嗟若(さじゃく)たり。吉なり。

(自分が危険な立場にあることに対して、とめどなく涙を流し、ため息をついて憂い嘆く。こうして日夜不安な気持ちとなることで、危険を自覚し、警戒を怠らなくなるのである。そうすれば吉である。)

→ 責任ある立場にあって、心配事が多く気が休まらない。しかし、この心配事に対して信念を持ってあれこれと考えを巡らせることが解決への条件。この姿勢を維持できれば吉である。

 

上九

王用(もっ)て出でて征(せい)す。嘉(よ)きことあり首(かしら)を折(くじ)く。獲(う)ることその醜(たぐ)いにあらず。咎(とが)なし。

(王が自ら征伐に出る。良い手柄として悪人の頭目の首を刎ねる。首を刎ねていい相手は悪人だけであり、国を守るためである。こうした徳があれば咎めはない。)

→ 大義名分あれば、積極的な強硬手段を用いると良い。ひたすら目的を達成することにこだわる時。優柔不断な態度を取ると運気が下がる。

 

(参考:鹿島秀峰「現代易占詳解」、本田濟「易」ほか)

  • この記事を書いた人

しんのすけ

1986年、愛知生まれ。アメリカの大学卒業。金融危機下でなんとか就職するも、会社の歯車として働くことに疑問を感じていた。その後「やりたいことをやる」という信念のもと、現在に至るまで7社5職種+独立・起業のキャリアを経験。プライベートでは易学の研究や中国語の勉強も。台湾が大好き。

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