六十四卦

43. 沢天夬(たくてんかい) -易経・六十四卦-

2020年12月28日

キーポイント

沢天夬(䷪)の卦は、陽が下から増していき、一番上にある陰の爻が押し切られる形です。

川に水が多すぎると溢れ出るか堤防が決壊してしまうように、勢いが盛んすぎると崩壊することもあります。

夬は決断や決定という意味であり、何かを決めなければいけない時期が来ています。

ただし、強い態度で決定を下してしまうと他人の恨みを買ってしまうため、穏やかに進めなければいけません。

 

沢天夬(たくてんかい)について

卦辞(沢天夬の概要)

夬(かい)は、王庭(おうてい)に揚(あ)ぐ。孚(まこと)あって号(さけ)ぶ、厲(あやう)きことあり。告(つ)ぐること邑(ゆう)よりす。戎(じゅう)に即(つ)くに利あらず。往くところあるに利あり。

夬(かい)では、罰を与えねばならない小人に対して、王の朝廷にてその小人の罪を明かさなければならない。誠意を尽くして、衆人に大声で呼びかけるといった手順を踏んでもなお、慎重さを欠かしては危うい。油断は禁物である。まずは制御しやすい自分が治める領において周知させるのが良い。むやみに武力に訴えても何も利はない。つまり、まず自身の正しさを証明し、相手をむやみに攻めてはいけないということである。この姿勢で進めば、利を得る。

 

六十四卦における配列(序卦伝)

益して止めなければ、かならず決(決壊)す。ゆえにこれを受けるに夬をもってする。

(風雷益によって)益し続けて止まることがなければ、堤防が決壊するようなことになる。ゆえにこれを受けるに夬をもって表す。

 

沢天夬の占考

関連ワード

決定、決断、決行、決着、決壊

 

運勢

勢いのままに押し切ろうとすると、不運や危険に見舞われる。

また、不慮の事故や災害にも注意すること。

何事も油断せずに、慎重に行動するのが良い。

 

願望

一気に達成しようとすると失敗する。

心を落ち着かせて、穏便に進めるのが賢明。

 

恋愛・関係

性急短慮の姿勢だと破綻を招く。

意見が衝突して離別する恐れあり。

あと一息の段階だと感じていても、落ち着きと寛容さが重要。

争論を起こさないよう慎重に事を進めるべし。

 

結婚

よほどの準備を整えていなければ、断るのが良い。

周囲の事情から強引に縁談をまとめられる場合がある。

たとえ縁談がまとまっても、婚後に争論起きやすく平穏な家庭は築きにくい。

 

性格

独断独行。争いごとを起こしやすい人。

初めは勢いがあるが、継続できない人。

言葉の不配慮から人間関係の断絶を招く人。

 

事業・方策

争論が起きやすい運気のため、なるべく穏便に事を運ぶよう努めること。

落ち着きと寛大さを心掛けるべし。

 

住居

一部に欠陥がある恐れあり。

しっかりと点検し、欠陥を見つけたら修理すること。

環境が悪いと感じた場合は、移転するのが良い。

 

相場

上限到達が近く、間もなく急落の兆しあり。

退避の準備を整えておくこと。

 

旅行

取り止めて無事。

やむを得ない事情の場合は、旅先での障害に注意すること。

 

病気

頭部に関連する怪我、痛み、病気など。精神的なものも含む。

病勢は激しく、急激に悪化する。

 

沢天夬の爻辞

※爻は下から数え、九は陽・六は陰を表す
 (例えば「初九」は一番下の陽の爻のこと)

初九

趾(あし)を前(すす)むるに壮(さかん)なり。往いて勝たざるを咎となす。

(足を前に進めることに意気盛んである。ただし、前進して勝てなければ咎めを受ける。)

→ 自信過剰で勢いのままに行動し、失敗する時。必ず成功する、というほどの策を事前に考える必要がある。そうでなければ好機が来るのを待つべし。

 

九二

惕(おそ)れて号(さけ)ぶ。莫夜(ぼや)に戎(つわもの)あれども、恤(うれ)うるなかれ。

(常に周囲を警戒し、敵襲があれば仲間に大声で知らせる。日が暮れて夜になって、敵兵が襲撃してきても心配はない。)

→ 慎重に警戒し、災難や事故が起こらないように細心の注意が必要な時。特に仲間内の人間関係に争いが生じないように気を配ること。

 

九三

頄(つらぼね)に壮(さか)んなり。凶あり。君子は夬々(かいかい)。独り行きて雨に遇う。濡(ぬ)るるが若(ごと)く慍(いか)らるることあり。咎なし。

(悪人を裁く意気が顔面に露骨に現れている。これでは凶を招く。君子は決然とした態度でいるべきである。そうしていれば他の君子から疑われることがあっても、咎められることはない。)

→ 性急に決着をつけようとすると、必ず失敗する。他人に内心を見破られぬよう、水面下でしっかりと準備を整えること。成功を確信できる時期になって初めて、表立って行動するようにすること。

 

九四

臀(いさらい)に膚(はだえ)なし。その行くこと次且(ししょ)たり。羊を牽(ひ)けば悔(くい)亡ぶ。言(こと)を聞くとも信ぜず。

(まるで尻の皮膚が剥けて座ることができなくなったように、先頭に立って進みたくなる。しかし、実際に進もうとしても他人とぎくしゃくして進まない。羊を牽く時のように、羊を先頭にして自分はあとからついて行くくらいの姿勢が良い。そうしていれば心配していた悔いもなくなるだろう。ただし、この注意を伝えても信じないのであろう。)

→ 自分が先頭に立って物事を進めようとしてはいけない。そうしたところで結局は進まないものである。まずは落ち着いて、人の後ろにつくことが必要。この注意を信じて受け入れるなら、凶の運勢は吉に変わる。

 

九五

莧陸(けんりく)夬夬(かいかい)、中行(ちゅうこう)にして咎(とが)なし。

(悪人と直に接しており、その悪人を切り捨てる。中庸の道に適った振る舞いをしていれば、何の咎めもない。)

→ まさに決断を下す時。これまで用意してきた材料をもって、一気に物事を進めること。周囲から迷わせるような言葉を浴びせられても、強固な意志によって前進を続けること。正しく振る舞い、過度に乱暴にならなければ、咎める人はいない。

 

上六

号(さけ)ぶことなし。終(つい)に凶あり。

(裁かれる悪人が大声で叫んでも、誰も助けに来ない。最後には凶となるだろう。)

→ 自分の過失、不備、油断が表面化して、損失や災害に見舞われる時。こうなると打つ手はなく、耐え忍んで運気が変わるのを待つしかない。

 

(参考:鹿島秀峰「現代易占詳解」、本田濟「易」ほか)

  • この記事を書いた人

しんのすけ

1986年、愛知生まれ。アメリカの大学卒業。金融危機下でなんとか就職するも、会社の歯車として働くことに疑問を感じていた。その後「やりたいことをやる」という信念のもと、現在に至るまで7社5職種+独立・起業のキャリアを経験。プライベートでは易学の研究や中国語の勉強も。台湾が大好き。

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