六十四卦

56. 火山旅(かざんりょ) -易経・六十四卦-

2021年2月12日

キーポイント

火山旅は、旅人が山(☶)の上で火(☲)を焚いて野宿している様子を表しています。

寝床が毎晩定まらないため、その火も移っていきます。

つまり、落ち着ける住居がなく、不安や寂しさを象徴する卦です。

軽はずみな行動は控え、何をするにも慎重さを心掛けるようにすれば、小さな願い事は叶えられます。

 

火山旅(かざんりょ)について

卦辞(火山旅の概要)

旅(りょ)は、小(すこ)し亨(とお)る。旅の貞(てい)あれば吉なり。

旅では、小さい願いは叶う。旅に出たからといって騒いだりはしゃいだりせず、謙虚に正道を守る姿勢を心掛ければ吉となる。

 

六十四卦における配列(序卦伝)

豊とは大なり。大を窮むる者は必ずその居を失う。故にこれを受くるに旅(りょ)をもってす。

(雷火豊による)豊とは大きいことである。大きくあることを極めた人間は必ず、安らげる場所を失うことになる。ゆえにこれを受けるに旅をもって表す。

 

火山旅の占考

関連ワード

目的地のない旅、流浪、移り動く、行く先に迷う、不安、寂しさ

 

運勢

運気が安定せず、落ち着くことが難しい時。

安らげる場所をなかなか見つけられず、不安や心配を感じる。

焦っても仕方がないので、慎重に行動し、謙虚に振舞う姿勢が吉を招く。

 

願望

小さな願いは叶う。

謙虚な精神と知恵ある行動を心掛ければ、確実に叶えられる。

 

恋愛・関係

お互いに相手への信頼や誠実さが足らず、不安により別れる。

心変わりしやすい時。

 

結婚

偶然による出会いなどがきっかけとなるような縁談。

安定した関係が築けず、たとえ成立しても長く保つことができない。

ゆくゆくは離別する。

 

性格

人との交流を好まない単独行動型。

一つの場所にじっとしていられない人。

外出、旅行が好きな人。

 

事業・方策

人間関係の円滑さを欠き、統制を取るのが難しい。

親交を厚くし、結束を強めること。

 

住居

落ち着くことができない住居。

外観を改めるのは良い。

移転の気運が高まるが、移転をしても安定はできない。

 

相場

上昇の兆しが見えても、なかなか動かない。

動き出しても小刻みに上下するのみで冴えない。

 

旅行

旅行は運気が上がるので良い。

気持ちが安らぐような旅行は特に吉。

 

病気

躁鬱病、熱病、肩や腰などの関節痛など。浮き沈みするような症状のもの。

初めは軽症であっても、次第に重くなる。小康状態となった場合は油断しないこと。

 

火山旅の爻辞

※爻は下から数え、九は陽・六は陰を表す
 (例えば「初九」は一番下の陽の爻のこと)

初六

旅(りょ)のとき瑣々(ささ)たり。斯(こ)れその災いを取るところなり。

(旅をしている時は気持ちにゆとりがなくなることがある。身分の低い小人物が旅に出れば、一層けち臭くなる。そのことが更なる災難を招くのである。)

→ 小さなことにこだわっていると、大きな損害を招く。自分のいる環境が悪い時には、分不相応のことはせずに自分の身を守ることに注力すること。

 

六二

旅(りょ)のとき次(やどり)に即(つ)く。其(そ)の資(たから)を懐(いだ)く。童僕(どうぼく)の貞(てい)を得たり。

(旅をしている時に最も心安らぐのは、宿に着いた時である。最も心が豊かになるのは、十分な資金が懐にある場合である。最も心に余裕が生まれるのは、忠実なしもべを得た時である。)

→ 日々余裕がないことが多いが、珍しく心が安らぐ時。資金や物資に不足がなく、また目下の人間からの協力も得られる。他人と協力するで吉を招く。

 

九三

旅(りょ)にして其(そ)の次(やど)りを焚(や)く。其(そ)の童僕(どうぼく)を喪(うしな)う。貞(ただ)しけれど厲(あやう)し。

(旅をしている時に泊まった宿が火事になってしまう。連れていたしもべにも逃げられてしまう。たとえ旅の目的が正しくても、この度は危険である。)

→ 動機が正しいにも関わらず、自己中心的に振る舞うことで厄災を招いてしまう時。信頼していた人間との争いごとや縁切りが発生し、孤立無援となる。

 

九四

旅(りょ)のとき于(ここ)に処(お)る。其(そ)の資斧(しふ)を得(え)たり。我が心、快(こころよ)からず。

(旅をしている時に、落ち着く場所と野営に必要な良い斧を得る。しかしそれでも居心地は悪く、愉快には感じない。)

→ 何事も思い通りには進まず、困惑する時。現在の環境や立場の居心地が悪く、安定しない。

 

六五

雉(きじ)を射て一矢(いっし)亡(うしな)ふ。終に以て誉命(よめい)あり。

(キジを射ようとするも、最初の矢は外れて失くしてしまう。しかし最後にはキジを射止めて名誉と爵位を得るだろう。)

→ 初めには多少の失敗や損失があるものの、最後には目的を達成して大きな功績を得られる時。

 

上九

鳥その巣を焚(や)く。旅人(りょじん)先(さき)には笑い後(のち)には号(さけ)び咷(よば)う。牛を易(えき)に喪(うしな)う。凶なり。

(高い所から人を見下すような鳥はその巣を焼かれる。旅人も謙虚さがなければ、笑っていられるのは初めのうちだけで、後には自分の居場所を失い泣きわめくことになる。牽いていた牛を国境で失ってしまう。凶である。)

→ 高位にいることで安心してしまい、油断や傲慢さが原因となって転落する時。自分の居場所を失う上に、人から憎まれることになる。凶である。

 

(参考:鹿島秀峰「現代易占詳解」、本田濟「易」ほか)

  • この記事を書いた人

しんのすけ

1986年、愛知生まれ。アメリカの大学卒業。金融危機下でなんとか就職するも、会社の歯車として働くことに疑問を感じていた。その後「やりたいことをやる」という信念のもと、現在に至るまで7社5職種+独立・起業のキャリアを経験。プライベートでは易学の研究や中国語の勉強も。台湾が大好き。

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