キーポイント
遯は、逃げる、退く、避けるという意味です。
乱世において、賢人は自分の信念を守るために自分から山に隠遁します。
一時逃れるのは良策ですが、乱世が終わって自分が活躍できる世になっても戻って来ないのは消極的すぎます。
好機が巡ってきたときには勇気を出して進むことも考えることが大切。
天山遯(てんざんとん)について
卦辞(天山遯の概要)
遯は、亨(とお)る。小(しょう)貞(ただ)しきに利あり。
遯は、君子の場合は隠遁するのが良い。世間から消えることになるが自己の節操を貫くことができるため、願い事は通る。一般の人の場合は、正道を守ることで利を得る。
六十四卦における配列(序卦伝)
恒とは久(きゅう)なり。物事もって久しくその所に居るべからず。故にこれを受くるに遯(とん)をもってす。
(雷風恒の)恒は恒久的ということである、物事は恒久的にその場所にいることはできないので、のがれる必要がある。ゆえにこれを受けるに遯をもって表す。
天山遯の占考
関連ワード
逃れる、退く、隠遁、不調和
運勢
運気の上昇時期が過ぎて、衰運となる時。
人間関係に不調和が生まれて孤立しがち。
思い切って現状を捨てて、しがらみから離脱することも必要。
願望
新しいことや拡大することに関連する願いは叶わない。
むしろ退くことや休むことで安泰を得る。
恋愛・関係
盛り上がった気持ちが失われていき、不調和となる時。
しばらくは関係や連絡を絶って、相手から遠ざかるのが良い。
結婚
縁談はまとまらない。あえてまとめようとせずに解消する方が良い。
仮に結婚を進めた場合は不調和となる。
性格
人嫌いな性格のため、内向的で消極的。
周囲と適合せずに孤立しがち。
事業・方策
新規、拡大に関係することは不可。
上手く行っていないことには早く見切りをつけて、撤退策を考えるべし。
住居
立ち退きの時が来ている。
タイミングを見計らって移転するのが良い。
相場
高値圏から次第に下落していく。
旅行
旅行の実施は思いとどまるのが吉。
引退旅行に限っては問題ない。
病気
顔のむくみ、虚脱感、便秘など。
重病以外はすぐに治る。重病の場合は凶の兆し。
天山遯の爻辞
※爻は下から数え、九は陽・六は陰を表す
(例えば「初九」は一番下の陽の爻のこと)
初六
遯尾(とんび)、厲(あやう)し。用(もっ)て往くところあるなかれ。
(逃げ遅れて一番後になってしまい、危険である。積極的に行動してはいけない。)
→ 対応が後手に回ってしまい運気が衰退する時。現状を守ることに集中すること。
六二
これを執(とら)うるに黄牛(こうぎゅう)の革(つくりかわ)を用(もっ)てす。これを説(と)くに勝(た)うる莫(な)し。
(志の固さは、まるで黄牛の革で縛り付けたように固い。これをほどくことは誰にもできない。)
→ 自分を固く守って、外に出てはいけない。これまでのことを整理するのが良い。
九三
係遯(けいとん)す。疾(やまい)あり厲(あやう)し。臣妾(しんしょう)を畜(やしな)うときは吉。
(下の二陰との係りに後ろ髪を引かれて逃げる決断ができない。それが病のような疲労困憊に繋がり危険である。召使いを養うときは吉。)
→ 人間関係によって行動が制約されてしまい、思うように動けない時。その苦労から気力を消耗するため、病気に気を付けること。
九四
好遯(こうとん)す。君子は吉。小人はしからず。
(心に好む相手がありながら、きっぱりと決心して逃げることができる。君子であれば吉だが、常人であれば吉とはならない。)
→ 物事を合理的に考えて、不要なものは思い切って捨て去ること。ただし、多くの場合は執着から逃れられずに決断に迷う。
九五
嘉遯(かとん)す。貞(ただ)しければ吉。
(良い形で隠遁できる。正道を守り、心が正しければ吉である。)
→ 今が引退・退陣の好機。この機を逃してさらに進もうとすれば、かえって失敗する。
上九
肥遯(ひとん)す。利あらざるなし。
(遠くでゆったりと隠遁できる。利益しかない。)
→ 何の支障もなく、周囲から祝福されて引退・退陣できる。そのあとにゆっくりと自分のやりたいことに時間を費やせる。
(参考:鹿島秀峰「現代易占詳解」、本田濟「易」ほか)