キーポイント
水風井は井戸を表します。
井戸で水を汲んでも、水が尽きることはありません。逆に水を汲まないとしても、井戸から水が溢れることはありません。
しかし、水を一度にたくさん汲もうとして井戸の瓶や縄に負担をかけて壊してしまうと、井戸から水を汲むことができなくなります。
分不相応の欲望を叶えようとしても無理が生じるだけなので、必要な分で満足できるような姿勢が重要であるという卦です。
水風井(すいふうせい)について
卦辞(水風井の概要)
井(せい)は、邑(ゆう)を改めて井(せい)を改めず。喪(うしな)うなく得(う)るなし。往くも来るも井々(せいせい)たり。汔(ほと)んど至らんとして、亦(ま)たいまだ井(せい)を繘(つりいと)せず、その瓶(つるべ)を羸(やぶ)る。凶なり。
井(せい)においては、村は移り変わるものではあるが、井戸は変わるものではない。何かが欠けて失われることもなければ、何かを付け加えられることもない。人々はいつでも井戸に水を汲みに行くことができ、そして水を汲んだらまた帰っていく。何の過不足もなく整っている。ただし、井戸の瓶が水面に届くまであと少しという時に、その瓶の縄を水面まで伸ばせず、そして瓶自体が壊れてしまうと、凶となる。
六十四卦における配列(序卦伝)
上に困しむ者は必ず下に反(かえ)る。故にこれを受くるに井(せい)をもってす。
(地風升と沢水困によって)上に昇り続けて止めることができなければ、人は苦しみを感じる。そうなれば、必ず下に戻っていくものである。ゆえにこれを受けるに井をもって表す。
水風井の占考
関連ワード
必要な分だけ得る、少ない量で満足する、過不足なし、生活、養い、扶養
運勢
現状に満足を感じ、維持しようとする姿勢が平安を招く。
挑戦などの新しいことは分不相応であり、上手く行かない。
願望
小規模の願いは叶う。
分不相応の大きな願望が叶わない。
多少は不足している方がちょうど良い。
恋愛・関係
地味に見えるかもしれないが、堅実に分相応な行動を取ること。
多くを望めば関係悪化の原因となる。
刺激がなくても平穏な関係に満足することで喜びあり。
結婚
地味だが平穏な生活を望むなら、まとめると良い縁談。
自分の理想を相手に押し付けないよう気を付けること。高望みは厳禁。
婚後は可もなく不可もなく、平凡な家庭となる。
性格
向上心がなく、縁の下の力持ちとなって目立たない人。
生活のために忙しく働き、心に余裕がない人。
新しいことを行うには向かず、堅実さを心掛けると良い人。
事業・方策
事業継続に必要な分だけの利益を得ようとするのは良い。
事業拡大や新規事業に手を出すと失敗する。
住居
移転は控えること。
生活維持に必要な改築や修理は良い。
相場
安値圏内にあれば、少しずつ上昇していく。
逆に、それまで高騰していた場合は、本来あるべき価値に戻っていく。
旅行
地味な小旅行なら大きな問題はない。
それ以外は取り止めるべし。
特に水害には注意。
病気
血行不順、気管支の疾患、腫物、神経衰弱など。
深刻な病気にはならないが、回復しても再発する恐れ。完治が難しい。
水風井の爻辞
※爻は下から数え、九は陽・六は陰を表す
(例えば「初九」は一番下の陽の爻のこと)
初六
井(せい)泥(ひじりこ)にして食(くら)われず。旧井(きゅうせい)禽(とり)たつなし。
(井戸の水がなくなってしまい、泥水を飲むことはできない。こんな古井戸では鳥さえも水を飲みに来ない。)
→ 力量や才能が乏しく、社会から必要とされる人になれない。時間を掛けて自己の能力向上に努めること。
九二
井谷(せいこく)鮒(ふ)に射(そそ)ぐ。甕(もたい)敝(やぶ)れ漏る。
(井戸には僅かな水しかなく、せいぜい井戸の底に住むフナを潤す程度である。井戸を汲む瓶が壊れて水が漏れてしまえば、なおさら水を引き上げることはできない。)
→ 将来成功する兆しはあるものの、目上からの引き立てがないため、地位向上は不可。苦労や困難に耐える時。
九三
井(せい)渫(くよ)くして食(くら)われず、我が心の惻(いた)みを為す。用(もっ)て汲(く)むべし。王明(めい)あらば、並びにの福を受けん。
(井戸の水が清く澄んでいるが、飲んでもらえない。それと同様に、才能や力量ある賢人が社会から必要とされない。それは心からの嘆きである。王に人を見る目があれば、王もその賢人もともに福を受けることができるだろう。)
→ すでに才能や力量があるものの、人との縁やタイミングに恵まれずに社会から評価を受けない。自分から積極的な主張や宣伝が必要。
六四
井(せい)甃(おさ)まる。咎(とが)なし。
(井戸の内壁を修繕する。咎めはない。)
→ 現状維持を心掛けて、不備や障害を防ぐよう努める時。他人からの評価を期待することはできないが、人のために苦労や努力をすることができれば無事を得る。
九五
井(せい)洌(いさぎ)よくして寒泉(かんせん)食(くら)わる。
(井戸の水は綺麗で、冷たい地下水をたくさん飲むことができる。)
→ これまでの苦労や努力が報われて、幸運に恵まれる時。私利私欲を捨てて奉仕的な姿勢を継続することで吉を得る。
上六
井(せい)收(くみと)って幕(おお)うことなし。孚(まこと)あれば元吉。
(何の問題もなく井戸から水を汲み取ることができるため、幕で覆うこともなく万人が利用できる。誠意があれば大いに吉を得る。)
→ これまでの苦労や努力が報われて、その成果の喜びを周囲と分かち合うことができる時。成功を収めても、努力を継続すべき。私利私欲は厳禁。そうすれば更なる幸運を得られる。
(参考:鹿島秀峰「現代易占詳解」、本田濟「易」ほか)