六十四卦

6. 天水訟(てんすいしょう) -易経・六十四卦-

2020年9月12日

キーポイント

上にある乾(☰)が強権を使って下を抑え、下にある坎(☵)が苦難に耐えられず上に訴えて争う。

天水訟は心が休まらず、万事が思うように行かない卦です。

相手にも自分にも損失や後悔が発生するので、最後まで争わないように気を付けることが大切です。

 

天水訟(てんすいしょう)について

卦辞(天水訟の概要)

訟は孚(まこと)ありて塞がる。惕(おそ)れて中(ちゅう)すれば吉。終えんとすれば凶。大人(たいじん)を見るに利あり。大川(たいせん)を渉るに利あらず。

争いにあたって、自分には心中に信念があるのに道筋が塞がり通らない。用心して中道に適った行動をすると吉。強引に押し切ろうとすると凶。偉大な人に会って裁いてもらうと良い。大川を渡るような冒険をしても良いことはない。

 

六十四卦における配列(序卦伝)

飲食すれば必ず訟(うった)えあり。故にこれを受くるに訟(しょう)をもってす。

(水天需によって)飲食すればかならずうったえがある。ゆえにこれを受けるために訟を用いて表す。

 

天水訟の占考

関連ワード

訴訟、争論、食い違い、裏切り、目上への反逆、和解すべき時

 

運勢

口論や争いごとが多く、人間関係の円滑さを欠きやすい時。特に目上との争いに注意。負けるが勝ち。

謙虚にして控えめが吉。

 

願望

手違い多く叶い難い。

目標が状況と一致せず、変更の必要あり。

 

恋愛・関係

意見の食い違いや考え方のずれにより関係悪い。

争いごとが原因となり離別の恐れあり。

こちらから相手に歩み寄ることが大切。

 

結婚

とにかく争いごとが多い。絶えず別居、離縁の恐れあり。縁談は断る方が良い。

不和の末に裁判問題などが起きる傾向。

 

性格

人に逆らい、周囲と合わせづらい。理屈っぽい性格。敵の多い人。

 

事業・方策

社会的な問題が起きやすい。

企業は内部の親睦を深めると吉。個人は目上の命令に従うべし。

 

住居

賃借に関係する争いごとが起きやすい。

移転を考える時。新築、増築、改築は不可。

 

相場

材料と価格が一致していない。

高い場合は下降し、低い場合は上昇する。不安定な時。

 

旅行

無理に実施すると手違いが生じる。

何か支障あれば中止するのが良い。正確な手続きを心掛ける。

 

病気

頭痛、ノイローゼ、下痢、不眠。

治りづらい。医師の誤診や薬の不適合に注意。

 

天水訟の爻辞

※爻は下から数え、九は陽・六は陰を表す
 (例えば「初九」は一番下の陽の爻のこと)

初六

事とするところを永くせず。小(すこ)しく言(ものい)うことあれども、終(つい)に吉なり。

(事を長引かせないようにすれば、多少の物言いがあっても、その弁解は明白であるため結局は吉である。)

→ 多少の口論や争論が起こっても、和解の態度を取れば無事に終わる。相手の非には目をつぶる方が良い。

 

九二

訟に克(か)たず。帰りて逋(のが)る。その邑人(ゆうじん)三百戸にして、眚(わざわい)なし。

(訴訟に勝てないで、退き下がって逃げ隠れる。逃げ隠れた先は村民三百戸の小さな集落で、謙虚な態度を取っていれば災いは起こらない。)

→ 勝ち目がないことを知り、自分の非を認めて訴えを取り下げることが大切。争えば敗れて損害を受ける。沈黙を守れば無事。

 

六三

旧徳に食(は)む。貞(てい)なれば厲(あやう)けれども終(つい)に吉なり。或いは王事に従えば成すなし。

(先祖の恩による領地だけで食ってゆくことに満足し、正道を守っていれば危ういといっても最後には吉である。時に君主の仕事に従事することがあれば、決して成功はしない。)

→ 親の教えや家訓を素直に実行していれば安定する。自己主張すると阻害される。功を立てても誇らず謙虚にしていれば吉。

 

九四

訟に克(か)たず。復(かえ)って命に即(つ)き、渝(かえ)りて、貞(てい)に安んずれば、吉なり。

(訴訟には勝てない。引き返して正しい道理に就き、気持ちを変えて正道を守ることに満足を求めれば、吉である。)

→ 争うことによる損害を悟り、自分の立場をわきまえて、目上の命に従えば無事。性急短慮な行動は控え、謙虚親和の姿勢が大切。

 

九五

訟(うった)え元吉(げんきつ)なり。

(争いごとがあればきっと勝つ。結果は大吉である。)

→ 部下、目上の両者を導き親和を得る。争いの仲裁に立つと吉。こちらの言い分や訴えが通り安心するとき。私利私欲では動かない方が良い。

 

上九

或いはこれに鞶帯(はんたい)を錫(たま)う。終朝(しゅうちょう)に三たびこれを褫(うば)わん。

(強引に押し切って勝つことで身分をもらい大帯を受け取ることがあるが、それは褒められたことではない。そうして得た功は朝まつりごとが終わるまでのしばらくの間に三度も奪われるだろう。)

→ 人と争いを続ける限り、勝利を得ても永続することはない。一時的な喜びを人生における喜びと錯覚しがちな時。いかに苦労をしても、人間関係が円滑でなければ何事も水の泡のように消えてしまう。

 

(参考:鹿島秀峰「現代易占詳解」、本田濟「易」ほか)

  • この記事を書いた人

しんのすけ

1986年、愛知生まれ。アメリカの大学卒業。金融危機下でなんとか就職するも、会社の歯車として働くことに疑問を感じていた。その後「やりたいことをやる」という信念のもと、現在に至るまで7社5職種+独立・起業のキャリアを経験。プライベートでは易学の研究や中国語の勉強も。台湾が大好き。

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