六十四卦

47. 沢水困(たくすいこん) -易経・六十四卦-

2021年1月9日

キーポイント

沢水困は、沢(☱)にある水(☵)が底から抜け出てしまうことを表しています。

本来はあるべきものを失ってしまったり得られなかったりする卦です。

困難な状況に陥っており何をしても上手くいかないので、今は焦らず耐え忍びながら自分の武器を静かに磨く時です。

「困」の字の中の「木」が成長することで四角の囲いを破って出て来るように、困難を耐え忍んだあとは必ず運気は上昇していきます。

 

沢水困(たくすいこん)について

卦辞(沢水困の概要)

困(こん)は、亨(とお)る。貞(ただ)し。大人は吉にして咎なし。言うことあれど信ぜられず

困(こん)では、困窮して苦しみながらも正しい道を貫き通す。これは常人には難しい。大人物であれば吉であり咎めはない。ただし、困窮しているときに何を言っても信じてもらえないので、知恵を隠して黙っているのが良い。

 

六十四卦における配列(序卦伝)

升りて已(や)まざれば必ず困(くる)しむ。故にこれを受くるに困(こん)をもってす。

(地風升の)升のように昇り続けて止まることができなくなれば、必ず困って苦しむことになる。ゆえにこれを受けるに困をもって表す。

 

沢水困の占考

関連ワード

困窮する、苦しむ、困難、欠乏、忍耐

 

運勢

支障や障害があるため進展は望めない。

金銭は不足し、人間関係にも円滑さを欠く。

今は忍耐の時。耐え抜いた先に運気が上がる時機が来る。

 

願望

今は何事も叶い難い。

困窮する時のため進展を得られない。

しかし、自分の内に知恵を蓄え、他人と接する時には柔順さを心掛けて維持すれば、最後に願望は叶う。

 

恋愛・関係

出会いに恵まれない時。

相手がいる場合は、お互いに苦労が絶えない。

ただ、この苦労を乗り越えることができれば、将来的には和合する。

 

結婚

縁談はまとまらない。

結婚しても、何かと障害が発生して苦労が多い。

苦労は永遠に続くわけではないので、共に苦労を耐えられる相手であれば和合する。

 

性格

金銭や人間関係に悩みが多い人。

忍耐強い人。

内に誠実さと外に柔和さを持つ人であれば、将来性に期待できる。

 

事業・方策

経営困難の時。

資金面や人材面を工夫して、忍耐して切り抜ける覚悟が必要。

不足を当然と思い、信用を表に表すことができれば、将来に運気上昇の兆しあり。

 

住居

水回りの設備が悪い。あるいは湿地に建てられている。

住環境が悪いため、移転するのが良い。

 

相場

下降傾向となる。

底値となるのは近く、そのあとは次第に上昇する。

 

旅行

旅先で水難事故が発生する。

取り止めるべし。

 

病気

食欲減退、精力減退、過労を原因とする症状、腎臓病など。

慢性的に悩まされる病気や症状が多い。

軽い症状でも手当を怠れば持病化する。すでに重病の場合はさらに悪化する。

 

沢水困の爻辞

※爻は下から数え、九は陽・六は陰を表す
 (例えば「初九」は一番下の陽の爻のこと)

初六

臀(いさらい)株木(しゅぼく)に困(くる)しむ。幽谷(ゆうこく)に入(はい)る。三歳、観ず。

(木の切り株に座ると臀部に痛みを感じ、長く座ることができず苦しむ。また、奥深い谷に入り込んだように暗い。三年間は日の目を見ることはない。)

→ 運気はどん底。苦労や困難が多く、問題の解決ができない。なるべく動かずに、長い間じっと耐え忍ぶ時。

 

九二

酒食(しゅし)に困(くる)しむ。朱紱(しゅふつ)まさ)に来(きた)る。用(もっ)て亨祀(きょうし)するに利あり。征(ゆ)けば凶。咎(とが)なし。

(酒や食事を与えられすぎて苦しむ。高位の人間が着る服が運ばれてきて、望まぬ昇格を押し付けられる。こういう時は得たものを用いて祭祀を行うのが良い。ただし、前進すれば凶となる。しかし咎めはない。)

→ 不足によって苦しむのではなく、必要十分以上のものが与えられて苦しむ時。不要の責務や責任を請け負うことになる。自ら積極的に働きかけると凶を招くため、神仏を祀るように謙虚な姿勢で、淡々と対応すべし。

 

六三

石に困(くる)しみ、蒺藜(しつり)に拠(よ)る。その宮(きゅう)に入(はい)りて、その妻を見ず。凶なり。

(前方に立ちふさがる大きな石に苦しみ、後方の茨には腰掛けられずに落ち着かない。我が家に帰っても妻は見えない。落ち着く場所がどこにもないため、凶である。)

→ 心身ともに落ち着かせる場所がなく、安心することができない。親しい人からの支援も得られず、孤独を感じる時。

 

九四

来(きた)ること徐々(じょじょ)たり。金車(きんしゃ)に困(くる)しむ。吝(りん)なれど終りあり。

(苦しむ仲間(初六)を助けに行こうとするが、遅れてしまう。金の車(九二)が邪魔をするからである。遅れることは恥ずべきことであるが、最後には良いことがある。)

→ 私情を理由に、自分がすべきことを疎かにする。その結果、世話苦労が増えてしまう。しかし、その行いが他人を助けるものであれば、最後に苦労は報われる。

 

九五

劓(はなぎ)られ刖(あした)たる。赤紱(せきふつ)に困(くる)しむ。乃(すなわ)ち徐(ようや)くにして説(よろこび)あり。用(もっ)て祭祀(さいし)するに利あり。

(上の人間からは鼻を切られ、下の人間からは足を切られる。志が低い人間ばかりの環境で、高位を与えられても自分の志とは異なるため苦しむ。しかし、長い時間ののちには徐々に喜ばしい結果を得られるだろう。また、神仏を祀ることで福を招く。)

→ これまで長らく困難ばかりの環境にいたが、ようやく問題解決の兆しが見える。困難を耐え忍ぶことで自分の力量に磨きがかかっており、長期の努力が大きく報われる時。

 

上六

葛藟(かつり)に臲卼(げきごつ)に困(くる)しむ。曰(ここ)に動けば悔(く)ゆ。悔いることあれば、征(ゆ)きて吉なり。

(まとわりつく植物の蔓や、岩だらけの険しい場所によって苦しむ。いま動けば悔いが生じる。自己の行いを悔やんで反省することができれば、前進して吉を得る。)

→ 煩わしさや忙しさによって身動きが取れず、状況を改善することができない。その状況によって追いつめられることで、初めて自分の行いを反省することができる。しっかりと反省したあとには、積極的に物事を行うことで吉を得られる。

 

(参考:鹿島秀峰「現代易占詳解」、本田濟「易」ほか)

  • この記事を書いた人

しんのすけ

1986年、愛知生まれ。アメリカの大学卒業。金融危機下でなんとか就職するも、会社の歯車として働くことに疑問を感じていた。その後「やりたいことをやる」という信念のもと、現在に至るまで7社5職種+独立・起業のキャリアを経験。プライベートでは易学の研究や中国語の勉強も。台湾が大好き。

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