どうも!台湾でら好き本筮易者、晋之助です。今回は易経の基本となる「八卦」のお話です。
と、その前に、そもそも易経って何でしょう?
皆さんが想像するように、易経とは占術の一つでもあり、思想や哲学とも言えます。
しかしその全てにおいて言えることは、易経とはこの世の万物を統計的な法則と偶然的な要素を使って表現する手段だということ。
「運命」や「まぐれ」など、非科学的な出来事でも易経では表現することが可能ということですね。
科学的な法則では説明できないことを人は「神性」だとか「スピリチュアル」だと言うが、易経もその一つと見られているわけじゃな。
そして「八卦」とは、その万物を表現するための基本要素(元素)として用いられるシンボルです。1つ1つのシンボルを卦といい、その卦が8つ集まったものを八卦と言います。
例えるなら現代の日本語で言うひらがなのようなもの。ひらがながなくては単語も文章も作れないように、八卦がなければ易経は成り立ちません。
ちなみに「八卦」は正しくは「はっか」と読みますが、今日では「はっけ」と発音してもよしとされています。
それでは今回は、易経の基本となる「八卦」について成り立ちからそのはたらき、そして8つの卦の説明を分かりやすく説明していきます。
ちなみに冒頭に書いた「易経について」をもっと詳しく知りたい人は、この記事もぜひ目を通してみてください。
では早速、八卦について詳しく知っていきましょう。
八卦の成り立ち
八卦の概要
八卦というのは、乾(けん)・兌(だ)・離(り)・震(しん)・巽(そん)・坎(かん)・艮(ごん)・坤(こん)の8つの卦から成ります。
それぞれの卦にはこの世の事象を表現する形である「象(しょう)」が与えられていますが、そのなかでも代表的な象を「正象」といい、自然の要素を用いて表します。
順に、乾=天・兌=沢・離=火・震=雷・巽=風・坎=水・艮=山・坤=地というのが八卦の正象です。
この正象に基づいて、それぞれの卦に様々な象が当てはめられています。
例えば「天」の正象を持つ乾は人の世界では「王」、人体では「頭」、動物では「龍」といった象を持ち合わせます。
「最も高い」ものや「尊い」ものなど、天に関連する事象が乾の象として与えられているというわけです。
八卦の創作者「伏羲」
易経においてはこの八卦が森羅万象のシンボルとして用いることで吉凶を読み解くのですが、この壮大なシンボルを作り出したのは一体誰でしょう?
それは伏羲(ふっき・ふくぎ)という古代中国の神話に登場する神様です。
この伏羲は八卦のほかにも、火を使った調理や漁・牧畜、婚姻制度といった「人の文化」を形成するための智慧を人間に教えたとされています。
神話の中のお話なのでいつ頃のことかは定かではないのですが、単純に考えると人の文化の始まりと同じようなタイミングで八卦は作り出されたのだと言えます。
八卦はのちに孔子を始祖とする儒家の思想と接近。四書五経の一つである「易経」という経典として、世に広まることとなります。
卦を分解してみると
これまで八卦のことを、乾・兌・離・震・巽・坎・艮・坤という具合に漢字で表現してきましたが、これは卦の名前に過ぎません。
八卦の実態は☰・☱・☲・☳・☴・☵・☶・☷という図です。太極図(白と黒の円形シンボル)と一緒に見たことがある人も多いと思います。
この図をひとつひとつ見てみると全て3段の横線から成り立っています。この横線を爻(こう)と呼びます。
爻にも2種類あるのが分かるでしょうか。一本線の⚊は「陽」であり、二本線の⚋は「陰」を表しています。
陽と陰の関係は「明るい・暗い」「男・女」「積極・受身」などといった相反する事象の組み合わせであり、いわゆる二元論的な考え方です。
陽と陰の二元素を発展させ、爻を2つ重ねた4つのシンボル(⚌・⚍・⚎・⚏)で四季(四象)が表されました。そしてさらに多くの事象を表現するために、陽と陰の爻を3つ重ねた図が八卦というわけです。
易経における八卦のはたらき
八卦はあらゆる事物事象の元素
「はっけよーい、のこった!」というフレーズを聞いたことがあると思います。そう、相撲で行司さんが使う掛け声です。
この「はっけよい」は「八卦良い」が語源となっているという説があります。
八卦には自然の要素として天・沢・火・雷・風・水・山・地という正象(象はかたちの意)が与えられ、さらにこの正象をもとに人物・人体・動物・場所・時間など様々な象意が付与されています。
まさに「八卦良い」は「すべてが良い」という素敵な掛け声だと言えます。
それぞれの卦の詳しい象意についてはこの記事の後半で。
六十四卦はあらゆる事物事象のシンボル
八卦を用いて万物を表現する、とこれまで書いてきましたが「8つの要素だけじゃ足りないでしょ」と気づいた人はとても鋭い観察眼をお持ちです。
易経を発展させてきた人物たちもおそらく同様のことを考え、八卦を2つ並べて作る「六十四卦(ろくじゅうしか・ろくじゅうしけ)」が生み出されました。
8×8で64通りの卦、ということです。
八卦の構成は3本の横線(爻)なので六十四卦は6本の爻から成り立つのですが、六十四卦ではなんと爻の1本1本にも意味があります。これを爻辞(こうじ)と呼びます。
つまり64×6の384通りの組み合わせを用いて、あらゆる事物事象を表現することができるわけです。
こうした表現の成り立ちや幅広さから分かるように、易経は論理的でかつ奥深いものなのです。
八卦の象意
乾(けん)
乾(☰)は爻が全て陽から構成される全陽、あるいは純陽と呼ばれる卦。正象は「天」を表していることから、乾の性質は「最高位のもの」「尊いもの」「活動的なもの」に関連しています。
象意は、神・王・龍などです。その他の象意の詳細はリンク先にありますのでぜひご覧ください。
兌(だ)
兌(☱)は唯一の陰である上の爻を水面と見立てて「澤」を表しています。
また、上部が開いているようにも見えることから体における口にも紐づけられ、口を開けて喜んだりおしゃべりしたりするという「悦び」の象意もあります。
離(り)
離(☲)は「火」を表します。上下の陽の爻が、中央にある陰の爻をはさんでいます。これははまさに「外は明るく、中は暗い」という火の特徴と言えるでしょう。
離には他にも、太陽・光・情熱・智恵・美といった象意があります。
震(しん)
震(☳)の正象は「雷」です。
二陰のなかに、下から一陽が押し上げて生じてきたことから、ものごとの始まり、あるいは前進といった勢いのある性質があります。
また、雷が春の訪れを告げることから震には春という象意もあります。奇しくも「雷」の字に草冠をつけると蕾となり、春の象徴を表しています。
巽(そん)
巽(☴)は「風」が正象の卦。
上爻と中爻を陣取る陽の気のなかに下爻の陰が入り込み、それがどんなところにでも吹き込んでいく風を表しています。
坎(かん)
坎(☵)が表すのは「水」です。中爻にある動的な陽が上下爻の静的な陰によって挟まれていることが、中央を流れていく水だと見て取れます。
水は低いところに流れていく性質であることから、坎には陥るという象意が当てはまります。
艮(ごん)
艮(☶)は下爻と中爻の二陰の上に、一陽が乗っていることから「山」を表している卦です。
「動かざること山の如し」というように、艮においても制止・休止、中止などといった「止まる」ことに関連する象意を持ち合わせています。
坤(こん)
三爻すべてが陰となる全陰の坤(☷)は、全陽の乾(☰)の相対照となる卦です。
乾が「天」「動」などといった象意であるのに対して、坤は「地」「静」といった象意を表します。
また「地」には全てを抱擁するような母性を感じられるため、坤には柔順・温厚・丁寧といった性質もあります。
まとめ
古代中国の神様「伏羲」が創ったとされる八卦は、自然現象や人間社会といったあらゆる事物事象を表現する基本要素です。
人の文化が形成され始めた数千年前から存在しているため、「占い」という枠には収まらないスケールの大きさを感じられたかと思います。
それでは今回の記事の振り返りです。
八卦の成り立ち:
・八卦の概要
・八卦の創作者「伏羲」
・卦を分解してみると
易経における八卦のはたらき:
・八卦はあらゆる事物事象の元素
・六十四卦はあらゆる事物事象のシンボル
八卦の象意:
・乾(けん)
・兌(だ)
・離(り)
・震(しん)
・巽(そん)
・坎(かん)
・艮(ごん)
・坤(こん)
八卦を基本とする易経はとても奥が深いもの。易者を10年やっても1人前とはとても言えません。
万物の真理を追究する易経、そしてその基本となる八卦に興味を抱いた人は、ぜひその神秘に触れてみてください。