キーポイント
剛健の乾(☰)のあとについて行けば、危機を免れます。喜ばせる兌(☱)の態度があれば、可愛がられるでしょう。
天沢履は目上から引き立てがあってかばわれる卦なので、下の者は礼儀を守ってついて行けば支障ありません。
ただし、自分が他人を押しのけて進むことは不可。
天沢履(てんたくり)について
卦辞(天沢履の概要)
虎の尾を履(ふ)む、人を咥(くら)わず。亨(とお)る。
虎の尾を踏んでも和らげる徳があれば噛まれることはない。望みは通る。
六十四卦における配列(序卦伝)
物畜えられて然る後に礼あり。故にこれを受くるに履(り)をもってす。
(風天小畜によって)物が蓄えられて、そうしたあとで礼がある。ゆえにこれを受けるに履をもって表現する。
天沢履の占考
関連ワード
礼儀、控えめ、柔順、実力ある者に従う、目上からの寵愛。
運勢
何をするときも謙虚な態度を取るべき時。特に目上の人物には柔順に従うべし。
思わぬ危険やハプニングが発生しやすい時だが、実際の被害は小さい。
願望
自信過剰で推し進めると叶わず。
目上の人物の指導やアドバイスに従えば叶う。
恋愛・関係
目上を慕う意味があり、柔和に接すれば叶う。
どちらかというと恋愛関係より肉体関係にある傾向。
結婚
玉の輿に乗るような縁談。少し不釣り合いだが幸せはある。
初めての縁組は成立しにくいが、再縁であれば調う。
色情問題に注意すること。
性格
柔和で礼儀正しく、ものの言い方が爽やかな性格。
人に可愛がられる才能あり。
事業・方策
分相応は範囲で前進すること。
大望や冒険心に基づいた行動は大損となる。
住居
新築は不可。増改築は小さな規模なら良い。
工事は実力のある業者に任せるべし。
相場
上昇する傾向に沿いながら動くも、急な下落場面に注意。
慎重に分析を行う必要あり。
旅行
入念な準備と計画が必要。
旅行の実力者のあとをついて行く方が良い。一人旅行は旅先でハプニングに見舞われる可能性がある。
病気
精神病、口内の疾患、胸部疾患、心臓病、咽喉、胃腸の疾患、性病など。
急激に症状が現れることが多く、急変にも注意。最善の治療法を期するべし。
天沢履の爻辞
※爻は下から数え、九は陽・六は陰を表す
(例えば「初九」は一番下の陽の爻のこと)
初九
素(つね)に履(ふ)む。往けば咎(とが)なし。
(いつも踏みしめていた道に従っている。咎めはない。)
→ 自分本来の姿勢をもって事に当たるべき時。第三者の意見に惑わされず、本業をしっかり守ると良い。共同で行うと円滑に進まない。
九二
道を履(ふ)む坦々たり。幽人(ゆうじん)なれば貞(てい)にして吉。
(平坦な道を踏むのが隠者のような人物であれば正道を守っており吉である。)
→ 分相応なこと、いつも通りのことを静かに行うべし。急ぐこと、いつもと違うことは良くない。手に余ることは成り行きに任せる方が良い。
六三
眇(すがめ)にして視(み)、跛(あしなえ)にして履(ふ)む。虎の尾を履(ふ)む。人を咥(くら)う。凶。武人大君(たいくん)となる。
(片目なのに見ようとしたり、足が不自由なのに踏もうとする。そんな状態で虎の尾を踏めば、その人は噛まれてしまうだろう。よって凶である。武人のような残忍な人物であれば大成する。)
→ 身の程をわきまえず自信過剰となった結果、挫折や失敗を受ける。控えめで謙虚な姿勢を保てば無事である。
九四
虎の尾を履(ふ)む。愬々(さくさく)ついに吉なり。
(虎の尾を踏んだとしても、普段から過ちを犯さないように気を付けていれば最終的には吉である。)
→ 慎重な態度で何事にも配慮をしながら事に当たる時。油断や軽率な行動は控えなければいけない。危険や被害を予想している間は心が落ち着かないこともある。
九五
夬(さだ)めて履(ふ)む。貞(てい)なれども厲(あやう)し。
(自分の行為に疑いもためらもなく踏む。たとえその行動が正道を守ったものであっても、危険がともなう。)
→ 厳格すぎて他人から反感を買い、非難される時。単独での行動は控え、目下の才能ある人物と協力して事にあたると良い。
上九
履(ふ)むを視(み)て祥(しょう)を考(な)す。それを旋(めぐ)るときは元吉(げんきつ)。
(神は人が踏む行為を見て禍福の兆しを現実化させるだろう。その立ち振る舞いが終始そつないものであれば大いに吉。)
→ 自分の言動を反省し、それをもとに行動することで全て順調に進展する。先人の知恵や第三者の意見などを取り入れることも重要。自己主張は吉運を逃すもととなるので注意べし。
(参考:鹿島秀峰「現代易占詳解」、本田濟「易」ほか)