沢地萃(たくちすい)について
キーポイント
地(☷)の上に水が集まって沢(☱)になる。沢地萃は集まるという意味です。
特に同類が寄ってきて集まることが多いため、集合しながら方向が定まりません。
智を集めて方針を決め、急いで行動するのが良いでしょう。
卦辞(沢地萃の概要)
萃(すい)は、王有廟(ゆうびょう)に仮(いた)る。大人を見るに利あり。亨(とお)る。貞(ただ)しきに利あり。大牲(たいせい)を用うるに吉。往くところあるに利あり。
萃(すい)では、王者が宗廟に至る。宗廟は祖先と子孫の精神が集まる場所なので、治める人物として大きな徳のある大人物に出会うことが望ましい。そうすれば願い事は叶う。ただし、それはあくまで正道を守ることが条件である。宗廟で祭祀をする場合は牛を犠牲に用いると吉。物が集まると豊かなので、大きな犠牲を用いても許される。積極的に前進するのが良い。
六十四卦における配列(序卦伝)
姤(こう)とは遇(ぐう)なり。物相い遇いて後に聚(あつま)る。故にこれを受くるに萃(すい)をもってす。
(天風姤の)姤とは遇うことである。お互いに遇えば次第に集まる。ゆえにこれを受けるに萃をもって表す。
沢地萃の占考
関連ワード
集まる、群衆、祭祀
運勢
物や人が集まり、活気がある時。
運気盛大のため、積極的に物事を行うのが良い。
ただし行動の際は、神仏に関する祭祀参加や参拝を欠かしてはならない。
願望
人として正しい行いをしていれば、目上からの援助を得て願望叶う。
ただし、競争相手が多いので覚悟すること。
恋愛・関係
相手は悦び、こちらは柔順となるので、和合して悦びあり。
多角関係となる恐れもあるので、人間関係のトラブルには注意。
結婚
互いに親和する良縁。
婚後の運勢も良い。家運・子運に恵まれて楽しい家庭となる。
性格
人に愛され親しみやすい性格。
芸能人、実業家、政治家など、人を集める職業に向く人。
事業・方策
大衆向きの商売を積極的に行うことで吉。
人を差別することなく集めて交友を厚くすると良い。
住居
近所との関係も良好で楽しい生活ができる住宅。
移転はしない方が良い。
相場
人気が集まり一時的に騰勢となる。
ただ長くは続かずにそのあとは安値となるため、大きな利益は望めない。
旅行
団体旅行が吉。
神仏参拝を旅行に含めるとさらに良い。
病気
胸部疾患、咳や痰、動悸、飲食物滞留など。
病勢は次第に悪化していき回復困難となる兆し。他の病との併発に注意。
沢地萃の爻辞
※爻は下から数え、九は陽・六は陰を表す
(例えば「初九」は一番下の陽の爻のこと)
初六
孚(まこと)ありて終わらず。乃(すなわ)ち乱れ乃(すなわ)ち萃(あつ)まる。若(も)し号(さけ)べば一握(いちあく)笑いと為(な)らん。恤(うれ)うるなかれ。往(ゆ)けば咎(とが)なし。
(誠意を持ちながらも、信念を貫き通すことができない。混乱してどうすればいいか分からなくなったり、集まる必要のない人たちと集まってしまう。もし泣き叫んで助けを求めれば、目上からの支援を掴むことができ、涙は笑いに変わるだろう。だから心配することはない。前進しても咎めはない。)
→ 何をするにも迷いが生じ、決断が難しい時。結局は自分が目標とすることに直接通じるような道を選ぶことが重要。不安に感じることもあるだろうが、なりふり構わず前進すれば運気は順調に上昇する。
六二
引けば吉にして、咎(とが)なし。孚(まこと)あって、乃(すなわ)ち禴(やく)に用うるに利あり。
(目上に引っ張ってもらって初めて吉を得て、咎めはない。神仏への誠実さがあれば、たとえ供物がわずかでも、それを用いて祭祀を実施して良い。)
→ 自分と同類の人間づきあいのままでは何も変わらず、目上の人間からの引き立てを得ることで吉を招く。しかし、他人を出し抜こうと言う姿勢だと物事は上手く行かない。神仏と向き合う時のような、誠実さと真心が必要である。
六三
萃如(すいじょ)たり。嗟如(さじょ)たり。利するところなし。往(ゆ)いて咎(とが)なし。小(すこ)し吝(りん)なり。
(自分と同類の人間と集まろうとする。しかし相手にされず、ため息をつくばかり。何も良いことがない。周りの人間関係を捨て、自分から進んで遠くにいて目立たない人間を仲間にすれば、少し恥を感じるものの咎めはない。)
→ 身近な人間とのすれ違いが多く、孤独を感じる時。近しい友人が自分にとって力強い支援者に見えても、得る者はなく何も楽しめない。近場で満足しようという考えを振り払って、遠くの存在でも自分と助け合うべき人間を見つけて交友関係を結ぶべきである。
九四
大吉(だいきつ)にして、咎(とが)なし。
(運よく大吉を得られる場合に限って、咎めはない。逆に言えば、大吉に至らない程度の結果であれば、咎めを受ける。)
→ 自分に大した才能や力量がなくても、良いめぐり合わせを掴むことができれば大吉を得ることができる。そのためには礼儀を守り、誠実さを忘れず、本質を見誤らないような姿勢を保つこと。
九五
萃(あつ)むるに位(くらい)あり。咎(とが)なし。孚(まこと)とするにあらざるときは、元永貞(げんえいてい)にして、悔(くい)亡(ほろ)ぶ。
(人を集めて信頼を得ることで高位に就く。咎めはない。それでも万人から信じてもらうことが難しければ、他人を本気で思いやる善行を永久的に行うような正しい徳を積むよう心掛けるといい。そうすれば心配される悔いは未然に消える。)
→ 自分の立場をよく認識すること。責任ある地位を得たとしても奢りや慢心を持たず、周囲に恩恵をもたらすような態度が大切。そうすれば今以上の人徳や人望を得ることができる。
上六
齎咨(しし)涕洟(ていい)す。咎(とが)なし。
(悲しみ怨む声を上げながら、涙と鼻水を流す。そうして自分の孤独を憂い、人が集まって来てくれるように反省すれば、咎めはない。)
→ やること全てが上手く行かず、どうしようもなく悲しみ嘆く。自分の過失を省みて、力量に応じた目標を立てて少しずつでも前進すること。
(参考:鹿島秀峰「現代易占詳解」、本田濟「易」ほか)