六十四卦

41. 山沢損(さんたくそん) -易経・六十四卦-

2020年12月18日

キーポイント

山沢損(䷨)は地天泰(䷊)の一番下の陽爻が一番上に移動した形です。

自分が損をして、相手に利益をもたらす形と言われています。

初めのうちは自分は損をしているように感じますが、時が経てばいずれ自分の利益として返ってくるという意味です。

私利私欲や驕りを取り除き、信念や誠意をもって行動すれば、最終的には自分が利益を得ることができます。

 

山沢損(さんたくそん)について

卦辞(山沢損の概要)

損は、(まこと)あれば、元吉(げんきつ)にして、咎(とが)なし。貞(てい)にすべくして、往くところあるに利あり。曷(なに)をかこれ用いん。二簋(にき)用(もっ)て享(まつ)るべし。

損では、信念をもって行動すれば、最後には大吉となる。咎めもない。自分の正しさを継続すれば、前進しても有利である。誠意があれば神への供物が二皿しか用意できなくても、神を祭るに足りる。

 

六十四卦における配列(序卦伝)

解とは緩(かん)なり。緩(ゆる)くすれば必ず失うところあり。故にこれを受くるに損(そん)をもってす。

(雷水解による)解とはゆるめるという意味である。ゆるめ過ぎると損失が生じる。ゆえにこれを受けるに損をもって表す。

 

山沢損の占考

関連ワード

損失、減退、損して得取る、他人のために苦労をする、公共事業

 

運勢

今は何かと世話苦労が多く、損することも多いため気分が滅入る時だが、次第に自分にとっての利益を得る。

ただし、私利私欲を捨てなければ、いずれ大損する。

誠意をもって行うことは全て吉となる。

 

願望

義理のために損をすることはあるが、長い目で見れば望むことは叶う。

誰かのために尽くすことで、後に利を得る。

 

恋愛・関係

こちらが損をして相手の気持ちを潤す時。

献身的な誠意によってお互いが和合して悦ぶ。

 

結婚

世話苦労が多いが、耐え忍んでまとめると良縁。

初めは何かと円滑に進まないが、後になって親和する。

 

性格

人のために尽くす人。そのため世話苦労が多い人。

慈善事業に縁がある人。

 

事業・方策

人のために財を減らすことがあっても、それが悦びとなるような損をすると良い。

後に発展して利益を生む。

 

住居

現状に不満あるため、改築するには良い。

移転は見合わせると無事。

 

相場

一時の損失で取り止めないこと。

正しい姿勢をもって継続していれば報われる。

ただし、現在が順調である場合は損失する恐れあり。

 

旅行

可能であれば延期するのが良い。

公益や慈善のための旅行であれば吉。

 

病気

過労、体力衰弱、血行不順、月経不順、便秘など。

栄養や気力不足により引き起こされる症状が多い。養生して体力をつければ次第に回復する。

 

山沢損の爻辞

※爻は下から数え、九は陽・六は陰を表す
 (例えば「初九」は一番下の陽の爻のこと)

初九

事(こと)を已(や)めて遄(すみや)かに往(ゆ)く。咎(とが)なし。酌(く)みてこれを損(そん)す。

(自分の仕事を止めて、速やかに相手を助けに行くべし。咎めはない。ただし、相手を助ける時は自己犠牲となるので、自分の力量をしっかり考慮した上で助けること。)

→ 周りの人、特に目上に対して、自分の犠牲を厭わずに迅速に支援すること。

 

九二

貞(ただ)しきに利あり。征(ゆ)けば凶。損せずして之これを益(ま)す。

(自分が正しいと思うことを続けるべし。積極的に進めば凶となる。自分が損をせずに、相手を援助するのが良い。)

→ 自分の本分を守ること。自己犠牲をしてまで他人を助ける必要はない。援助を期待している人間を突き放すことがむしろその人の自立を促し、結果的に援助となるものである。

 

六三

三人行けば一人を損(そん)す。一人行けばその友を得(う)。

(三人で行けば気が多くてまとまらない。一人で行けば自分の目的に基づいて行動できるので、必ず気の合う友を得ることができる。)

→ 複数人で行動すると歩調を揃えることができない。単独で行動する方が良い。独自に行動することで、目上からの支援を得ることができる。

 

六四

その疾(やまい)を損(そん)す。使(も)し遄(すみや)かなれば喜びあり。咎(とが)なし。

(肉体的あるいは道徳的な病を減らすことができる。もし速やかに対処すれば、治癒の喜びがある。咎めはない。)

→ 何かと支障が多い時。今は発展する方法を考えるより、現状の不備や困難への対策を速やかに整えること。

 

六五

或(ある)いはこれを益(ま)す。十朋(じっぽう)の亀(き)も違(たが)う克(あた)わず。元吉(げんきつ)。

(天下の人々は自分が損をしても、君主の利益となるように行動する。これは大変高価な大亀を使って占ったとしても、間違いないだろう。大吉である。)

→ 私利私欲を捨て、柔順な徳があれば、目下からの協力と目上からの引き上げによって大吉となる。

 

上九

損せずしてこれを益(ま)す。咎(とが)なし。貞(ただ)しければ吉にして、往(ゆ)くところ有るに利あり。臣(しん)を得るに家なし。

(目下の者に損をさせず、むしろ利益を与える。咎めはない。正道を守れば吉であり、前進しても良い。天下の人々は服従し、個々の家の境界がなくなるため、天下は一つの家となる。)

→ 相手に損をさせず、そして自分も利益を得る時。これまで積み上げた人徳により、目上も目下も献身的な姿勢で一致団結し、成功を収める。

 

(参考:鹿島秀峰「現代易占詳解」、本田濟「易」ほか)

  • この記事を書いた人

しんのすけ

1986年、愛知生まれ。アメリカの大学卒業。金融危機下でなんとか就職するも、会社の歯車として働くことに疑問を感じていた。その後「やりたいことをやる」という信念のもと、現在に至るまで7社5職種+独立・起業のキャリアを経験。プライベートでは易学の研究や中国語の勉強も。台湾が大好き。

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