六十四卦

25. 天雷无妄(てんらいむぼう) -易経・六十四卦-

2020年10月7日

キーポイント

无妄はいつわりのないことを意味します。道理として自然とそうなるということです。

天(☰)も雷(☳)も自然の道理のままに動き、そこには一点の私心もありません。

ただし自然の動きは人間社会にとって天災や災害にもなります。

ゆえに无妄の時は、私利私欲を捨てて誠実さを持ち、時が過ぎるのを待つ方が良いのです。

 

天雷无妄(てんらいむぼう)について

卦辞(天雷无妄の概要)

无妄は、元(おお)いに亨(とお)る貞(ただ)しきに利あり。それ正にあらざれば(わざわい)あり。往くところあるに利あらず。

无妄では、願い事は大いに叶い、正道を守れば利がある。ただし、動機が不正ならば、過ちを犯す。前進しても不利である。

 

六十四卦における配列(序卦伝)

復(かえ)れば妄(みだ)りならず。故にこれを受くるに无妄(むぼう)をもってす。

(地雷復によって)正しくもとに復れば妄りではなくなる。ゆえにこれを受けるに无妄をもって表す。

 

天雷无妄の占考

関連ワード

偽りのないこと、正道を外れると災いがある、天災、人災、成り行きに従えば無事、私利私欲は不幸を招く。

 

運勢

天災、人災に注意。

私利私欲に走ると凶。物欲は控えること。

 

願望

あえて何も期待せずに、自分の役割を果たしていれば叶う。

社会的マナー、約束事を守ること。実力者や目上の人に従うこと。そうすれば物事が順調に進む。

 

恋愛・関係

運命的な出会いを経験する時。

ただし、無理やり推し進めようとすると悪い結果となる。成り行きに任せるのが良い。

隠し事など、不義理な関係作りをすれば思わぬ災害が起こるため注意。

 

結婚

独断的に決めれば災いあり。

婚後は争いごとが起きやすいため、温和であることを心掛けるべし。

 

性格

気性の激しい人。

厳格な人。

社会的に活躍、貢献している人。

 

事業・方策

公共事業は吉。

利益中心で事業を考えると失敗が多い。

 

住居

災害を受けやすいため、移転すると吉。

 

相場

社会情勢に応じて急激に上がることあり。

ただし、高値圏から暴落する危険もあるため注意。

 

旅行

天災や人災が起こる可能性が高い。

どうしても行かなければいけない場合以外は、取り止める方が良い。

 

病気

頭痛、ノイローゼ、てんかん、胸部の激痛、心臓病、怪我、打撲など。

病勢が激しくなるため、大きな病院で治療すべし。自然治癒や民間療法に頼るのは危険。

 

天雷无妄の爻辞

※爻は下から数え、九は陽・六は陰を表す
 (例えば「初九」は一番下の陽の爻のこと)

初九

无妄なり。往けば吉なり。

(誠であれば、前進して吉となる。)

→ 成り行きに任せて進めば吉を招く。ただし、実力以上のことには手を出さずに、誠意をもって事にあたること。

 

六二

耕さずして穫(え)(し)せずして(よ)するときは、往くところに利あり。

(耕さないのに収穫があり、開墾の努力を積み重ねなくても畑が豊かになる。前進する先に利がある。)

→ 富を得ようとするのは自分勝手な願望であるが、そうした気持ちを捨てて道理に沿って動けば行き先は明るい。私利私欲を捨てて、分相応のことに満足すること。

 

六三

无妄の災あり。或いはこれが牛を繋ぐ。行人(こうじん)の得ものは、邑人(ゆうじん)の災い。

(予想できない災いに遭遇するだろう。例えば、繋いでいた牛を通りがかりの人が黙って持って行った。そのため近くの村人が牛泥棒として疑われてひどい目に遭う、というようなことである。)

→ 思いもよらない災難に遭う。証拠のない罪に問われたり、他人の責任を押し付けられたりする。予想することは難しいが、周囲で起こることに注意しておくこと。

 

九四

貞(てい)にすべし。咎(とが)なし。

(進んで何かをしてはいけない。正道を固く守ること。そうすれば咎めはない。)

→ 前進させるよりは一時的に休止、抑制させる時。周囲の情勢に左右されずに堅実に現状を守ること。

 

九五

无妄の疾(やまい)あり。薬(くすり)することなくして喜びあり

(原因のない病気になるが、薬を飲まずとも自然に治る。逆に薬を飲むことは反自然的なことである。)

→ 作為的な対策はかえって逆効果になる。周囲の流れに従い、自分の力量に応じて、自然な姿勢でことに当たることが喜びに繋がる。

 

上九

无妄にして行けば、(わざわい)あり。利するところなし

(行き詰って先に行けないのに、強いて進もうとすると無理が生じる。何の利益もない。)

→ 何事も行き過ぎは良くない。災いのもととなる。欲張りや野望は捨てて、現状維持を心掛けること。

 

(参考:鹿島秀峰「現代易占詳解」、本田濟「易」ほか)

  • この記事を書いた人

しんのすけ

1986年、愛知生まれ。アメリカの大学卒業。金融危機下でなんとか就職するも、会社の歯車として働くことに疑問を感じていた。その後「やりたいことをやる」という信念のもと、現在に至るまで7社5職種+独立・起業のキャリアを経験。プライベートでは易学の研究や中国語の勉強も。台湾が大好き。

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