キーポイント
兌(☱)の卦では下爻・中爻に安定した陽爻があり、その上にある陰爻が安心して楽しむことができることから、「悦び」の象徴とされています。
ただし、人が悦ぶときにはつい油断してしまうので、正しくない道に行かないよう気を付けること。
また、体の部位で兌(☱)は口を意味するため、兌為沢は二つの口が笑ったりおしゃべりしたりする様も表しています。
兌為沢(だいたく)について
卦辞(兌為沢の概要)
兌(だ)は、亨(とお)る。貞(ただ)しきに利あり。
兌では、願いことが叶う。ただし、正道を守ることができる場合にのみ利益がある。
六十四卦における配列(序卦伝)
巽とは入るなり。入りて後にこれを説(よろこ)ぶ。故にこれを受くるに兌(だ)もってす。
(巽為風による)巽は入り込むことである。他人のふところに入り込むことができれば喜ばれる。ゆえにこれを受けるに兌をもって表す。
兌為沢の占考
関連ワード
悦び(喜び)、愛嬌、娯楽、ユーモア、おしゃべり、多弁
運勢
喜ぶことが多く、楽しい時。
ただし、油断や慢心をすると運気が下がる原因となるため、謙虚さを維持すること。
口論や批判にも注意すべし。
願望
謙虚な姿勢を維持していれば、願いごとは叶い、心が悦ぶ。
失言などで信頼を失わないよう気を付けること。
恋愛・関係
こちらは相手に好意を寄せているが、相手はこちらを向いていない。
口論が起こって関係が損なわれることあり。
結婚
相手が結婚を望んでいない。
ただし、こちらがまごころを示せば、やがてまとまる。
性格
愛嬌があって明るい性格。
話がうまく、よく喋る人。
少し小心者。
事業・方策
言い争いを控えて、油断や慢心をせず、何事にも柔順な姿勢を取ること。
その上で、自分が望む事業に携わるのが良い。
住居
移転は控えること。
現状に不満があれば、修繕や改築で補うのが良い。
相場
基本的には安値圏内で落ち着く。
上昇する場面もあるが一時的なもの。
旅行
慰安旅行には良い時。
旅先で口論が発生しないよう注意すること。
病気
口腔内の疾患、肺の疾患、消化器系統の疾患、腎臓・膀胱の疾患、性病、怪我・外傷など。
軽症の場合を除けば、病気が体内に留まることとなり早い回復は望めない。
兌為沢の爻辞
※爻は下から数え、九は陽・六は陰を表す
(例えば「初九」は一番下の陽の爻のこと)
初九
和して兌(よろこ)ぶ。吉なり。
(上下関係に関心がないため、純粋に人を悦ばせることができる。吉である。)
→ 身分や地位にこだわることなく、目の前の人を悦ばせようとする姿勢を心掛ければ、何事も順調に進められる。
九二
孚(まこと)もて兌(よろこ)ぶ。吉にして悔(くい)亡(ほろ)ぶ。
(信念をもって人を悦ばせる。そうすれば吉であり、悔いはなくなる。)
→ 固い信念を持ちながら、真心を込めて人を悦ばせようとすれば吉。真面目に取り組むことで、抱えていた心配もなくなる。
六三
来(きた)りて兌(よろこ)ぶ。凶なり。
(自分より地位が低い者を悦ばせようとする。凶である。)
→ 目の前の快楽のため、あるいは見栄のために、誠実さを欠く行動をしてしまう。信用を失うことになり、凶である。
九四
商(はかっ)て兌(よろこ)ぶ。いまだ寧(やす)からず。介疾(かいしつ)あれども喜びあり。
(悦ぶべきかどうか天秤にかけている。そのため、気持ちが休まらない。軽い病気にかかったようなものだが、毅然としていれば最後には喜びがある。)
→ 目の前の快楽のため、あるいは見栄のために、心が迷う。それでも強い信念を持つように心掛ければ、最後には福が訪れる。
九五
剥(はく)に孚(まこと)あれば、厲(あやう)きことあり。
(自分の剛毅さをはぎ取ろうとする小人物を信じることがあれば、危ういことがあるだろう。)
→ 自分のことを喜ばせようとする小人物に取り巻かれる。自分に自信や徳があるために小人物が寄ってくるのだが、こうした小人物を近づけてしまうのは危険である。
上六
引いて兌(よろこ)ぶ。
(地位の高い者が目下の者の機嫌を取ろうとする。しかし相手が悦んでいるかどうか分からないので、一歩引いている。)
→ 自分の欲求を満たすためだけに第三者を巻き込んだ結果、信頼を失う。
(参考:鹿島秀峰「現代易占詳解」、本田濟「易」ほか)