六十四卦

62. 雷山小過(らいざんしょうか) -易経・六十四卦-

2021年3月13日

キーポイント

小過(䷽)の卦は、真ん中にある陽をはさんで陰がはびこっている形です。

陽は大人物、陰は小人物の象徴でありますが、多勢である小人物が横暴となっていることを表しています。

こういう時は謙虚で慎重な姿勢を取り、何事もやり過ぎないことを心掛けるのが良いでしょう。

小事であれば実現可能ですが、大きなことは不可です。

 

雷山小過(らいざんしょうか)について

卦辞(雷山小過の概要)

小過は、亨(とお)る。貞(ただ)しきに利あり。小事(しょうじ)に可(か)なるも大事に可ならず。飛鳥(ひちょう)これが音(ね)を遺(のこ)す。上(のぼ)るに宜(よろ)しからず下(くだ)るに宜(よろ)し。大いに吉。

小過では、願いが叶う。ただし、正道を守る場合にのみ利益がある。小さなことをするなら可だが、大きなことには不可である。鳥が通り過ぎていき、その鳴き声が耳に残る。上に昇れば休めるところはないが、下に降れば落ち着く場所を得るため、大吉である。

 

六十四卦における配列(序卦伝)

その信ある者は必ずこれを行なう。故にこれを受くるに小過(しょうか)をもってす。

(風沢中孚によって得た)孚、すなわち信念を持つ者は必ず継続して実行する。そうすればいつかは中庸を過ぎてしまう。ゆえにこれを受けるに小過をもって表す。

 

雷山小過の占考

関連ワード

少し行き過ぎる、少し度が過ぎる、背反、離反、小事は可、大事は不可、前進は警戒、退くのが良い

 

運勢

分不相応のことに手を出すことで、進退が窮まる。

分相応の小事なら良し。大事は不可。

何事もやり過ぎは禁物。

人間関係において背反が起きやすい。

 

願望

願望が少し大きすぎるため、一旦は退くのが良い。

あるいは小事に変えれば叶う。

 

恋愛・関係

高望みが原因で、背反離別となりやすい。

何事も行き過ぎないよう心掛けること。

 

結婚

意見が食い違うためまとまらない縁談。

婚後もお互いの性格の相違などにより平穏な生活は送れない。

 

性格

他人と意見が合わない人。

分不相応なことに手を出して失敗する人。

嘘やごまかしが多い人。

 

事業・方策

新規や拡大に関する事業は失敗のもと。

控えめにするのが良い。

人間関係の断絶が起きやすい時。

 

住居

今の住環境は悪い。

小規模の修繕や改築なら良いが、移転などの大事は不可。

今は時機と場所を選定して待つべし。

 

相場

小さな材料で少々の上昇はある。

ただし、大きく下落することがあるので慎重になるのが良い。

 

旅行

取り止めるのが良い。

遠出をしても心休まらず、また事故の可能性もある。

 

病気

精神病、手足の疾患、外傷、腸や腎臓の疾患、血行不順、下痢など。

軽症以外は病根深く、治療が長期化する。重病化にも注意。

 

雷山小過の爻辞

※爻は下から数え、九は陽・六は陰を表す
 (例えば「初九」は一番下の陽の爻のこと)

初六

飛鳥(ひちょう)以て凶。

(過度に高く飛ぶ鳥のようである。下に降ることを知らないため、凶である。)

→ 分不相応な大望が原因で禍を招く。分相応に現状を守るのが良い。

 

六二

其(そ)の祖を過ぎて、其(そ)の妣(ひ)に遇(あ)う。其(そ)の君に及ばず、其(そ)の臣に遇(あ)う。咎(とが)なし。

(祖父となる九五はいないため、祖父を通り過ぎる。そして祖母となる六五と出遇う。同じく、君主となる九五はいないため、君主にはたどり着けない。そして臣となる六五と出遇う。咎めはない。)

→ 謙虚で柔順な姿勢を維持していれば、望んでいた最善の結果は得られずとも、まずまずの成果を得ることができる。

 

九三

過きずしてこれを防ぐ。従って或いはこれを戕(そこな)う。凶。

(行く先に悪人が待ち構えており、通り過ぎることができず通行を防がれる。さらには殺されることもあるかもしれない。凶である。)

→ 凶運盛大な時。何をするにしても上手く行かないことが多い。さらには思わぬ厄災に遭遇することもある。

 

九四

咎(とが)なし。過きずしてこれに遇(あ)う。往けば厲(あやう)し必ず戒(いまし)めよ。永貞(えいてい)に用うるなかれ。

(静かにしていれば咎めはない。悪人と出遇い、やり過ごすこともできない。しかし、自分から進んで悪人を討とうとするのは危うい。必ず注意しなければいけない。いつまでも自分の正義を貫こうとしてはいけない。)

→ 状況や環境が悪い時だが、これ以上悪化させないよう大いに用心すること。積極的な行動は悪化の原因となる。慎重な姿勢を心掛け、臨機応変に対応することで無事を得る。

 

六五

密雲(みつうん)あれど雨ふらず。我が西郊(せいこう)よりす。公弋(よく)して彼(か)の穴に在(あ)るを取る。

(西の郊外より濃い雲が湧いても雨はいまだ降らない。君主は矢を放って、穴に潜っている六二を捕らえて自分の補佐として用いる。)

→ 成し遂げようという意欲があっても実現できるわけではない。何事も思い通りに行かない時。今は有望な部下を育成することに専念し、いずれ来る好機に備えること。

 

上六

遇(あ)わずこれを過ぐ。飛鳥(ひちょう)これが凶に離(かか)る。これを災眚(さいせい)と謂(い)う。

(もはや邪魔をする者には出遇わず、高く飛び過ぎて行く。高く飛ぶ鳥が矢で射られるような凶運に見舞われる。これを天災と人災と言う。)

→ 自分の力量を過信して盲進することで、進退窮まる。失敗、挫折、批判を招くこととなる。自業自得である。

 

(参考:鹿島秀峰「現代易占詳解」、本田濟「易」ほか)

  • この記事を書いた人

しんのすけ

1986年、愛知生まれ。アメリカの大学卒業。金融危機下でなんとか就職するも、会社の歯車として働くことに疑問を感じていた。その後「やりたいことをやる」という信念のもと、現在に至るまで7社5職種+独立・起業のキャリアを経験。プライベートでは易学の研究や中国語の勉強も。台湾が大好き。

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